フランケン大公

フランケン大公とは

フランケン大公は、中世の神聖ローマ帝国に存在した部族大公の一つです。その領域は、現在のドイツ中西部に位置し、マイン川流域を中心とした地域を支配していました。「フランケン」という名前は、現在のバイエルン州北部に位置するフランケン地方を指すこともありますが、歴史的にはそれよりも広い範囲を包含していました。

フランケン大公の歴史

成立と消滅

フランケン大公は、906年頃にコンラート家のコンラート1世が、カロリング朝の衰退に乗じてフランケン地方の一円的な支配を確立したことで成立しました。コンラート1世は911年に東フランク王に選出され、弟のエーバーハルト3世に大公位を譲りました。しかし、939年にエーバーハルト3世がオットー1世（大帝）に対して反乱を起こし敗死すると、オットー大帝はフランケンを重視し、以降フランケン大公を置くことはありませんでした。

西フランケン大公

フランケン大公の消滅と前後して、ライン川沿いのフランケン地方西部を統治していたヴォルムスガウ伯のヴェルナー5世が西フランケン大公となりました。ヴォルムスガウ伯は、後のザリエル朝です。しかし、1093年にザリエル朝のハインリヒ4世がライン宮中伯であるハインリヒ2世に西フランケンの伯領を与えたことで、西フランケン大公は消滅しました。

東フランケン大公

1079年、ハインリヒ4世が娘アグネスの婚約者であったホーエンシュタウフェン朝のフリードリヒに大公位を与えて成立しました。フリードリヒは後にシュヴァーベン大公も兼ねました。ローテンブルクを居城としたため、ローテンブルク大公とも呼ばれました。しかし、1196年以降は大公が任命されることはなく、やがて大公領は分裂していきました。1442年以降はヴュルツブルク司教が東フランケン大公位を称しましたが、これは正式なものではありませんでした。

領域としてのフランケン

現在のフランケンという地名は、バイエルン州北部の地方名として知られていますが、歴史的にはバイエルンの一部ではなく、その領域も現在のフランケンよりも広範囲に及んでいました。現在の州で言えば、バイエルン州の他に、バーデン＝ヴュルテンベルク州、ヘッセン州、ラインラント＝プファルツ州にまたがっています。

このような状況になったのは、大公が消滅した後、この地域の領域統合が進まず、ナポレオン戦争やドイツ統一といった外部要因によって、近隣の領邦に統合されていったためです。

東部のニュルンベルク城伯領は、アンスバッハ辺境伯とクルムバッハ辺境伯に分割され、1791年にプロイセン王国に売却された後、ウィーン会議の結果バイエルン王国領となりました。アンスバッハ辺境伯アルブレヒト・アヒレスとクルムバッハ辺境伯アルブレヒト・アルキビアデスは、フランケン地方の統合とフランケン公領の創設を目指してそれぞれ第一次辺境伯戦争、第二次辺境伯戦争を引き起こしましたが、帝国自由都市ニュルンベルクや他の帝国諸侯に反撃され、失敗しました。

中部のヴュルツブルク司教領は1806年、ハプスブルク家のフェルディナンド3世を君主とする公国となり、更にウィーン会議でバイエルン王国領となりました。以上の二地域はそのままバイエルン州の一部となり、現在「フランケン地方」または「バイエルン・フランケン」と呼ばれています。

西部、ライン宮中伯領となった領域は、1777年にバイエルンのヴィッテルスバッハ家の断絶を受けて宮中伯（プファルツ選帝侯）カール・テオドールがバイエルン選帝侯となったことにより、バイエルンに併合されましたが、1801年、革命戦争中のフランスに譲渡されました。そしてウィーン会議の結果、バーデン大公国とヴュルテンベルク王国に譲渡されました。この領域は現在バーデン・ヴュルテンベルク州の一部です。

北部はヘッセン方伯領となりました。この領域と、帝国都市として独立を保ったフランクフルト・アム・マインは、現在ヘッセン州に属しています。

歴代領主一覧

フランケン大公

コンラディン家（コンラート家）
コンラート1世若王（在位：906年 - 911年）
エーバーハルト3世（在位：911年 - 939年）

西フランケン大公

ザーリアー朝
ヴェルナー5世（在位：? - 935年）
コンラート赤毛公（在位：944年 - 955年）
オットー1世老公（在位：978年 - 982年および1002年 - 1004年）
コンラート1世（在位：1004年 - 1011年）
コンラート2世（在位：1011年 - 1039年）
コンラート3世若公（在位：1054年 - 1055年）
コンラート4世共治王（在位：1076年 - 1087年および1089年 - 1098年）

東フランケン大公（ローテンブルク大公）

ホーエンシュタウフェン朝
フリードリヒ1世（在位：1079年 - 1105年）
コンラート1世（在位：1116年 - 1152年）
フリードリヒ2世（在位：1152年 - 1167年）
フリードリヒ3世（在位：1167年 - 1169年）
フリードリヒ4世（在位：1169年 - 1188年）
コンラート4世（在位：1188年 - 1196年）

関連項目

神聖ローマ帝国
部族大公
* 帝国クライス

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