フランコ・アルファーノ

フランコ・アルファーノ（Franco Alfano, 1875年 3月8日 - 1954年 10月27日）は、20世紀イタリアを代表するオペラ作曲家の一人です。リヒャルト・シュトラウスやクロード・ドビュッシーといった同時代の作曲家からの影響を受けつつ、独自の音楽スタイルを確立しました。

イタリア南部のナポリ近郊ポジッリポに生を受けたアルファーノは、地元のナポリ音楽院で音楽の基礎を学びました。その後、さらなる研鑽のためドイツのライプツィヒ音楽院に留学し、著名な作曲家ザーロモン・ヤーダスゾーンに作曲理論を師事。このドイツでの学びは、彼の音楽語法に大きな影響を与えたと考えられます。

ライプツィヒでの留学を終えた後、アルファーノはベルリンなどを拠点にピアニストとして活動を開始します。並行してオペラの創作にも意欲的に取り組みましたが、キャリア初期に作曲された作品は、期待されるような成功を収めるには至りませんでした。

1899年からは活動の場をパリに移し、より国際的な環境に身を置きます。この時期、彼は著名なバレエ団「フォリ・ベルジェール」のために2つのバレエ音楽を作曲し、その才能が認められ好評を博しました。また、同じ頃にはピアニストとしてロシアへの演奏旅行も行っています。このロシア滞在中、彼は文豪レフ・トルストイの長編小説『復活』に感銘を受け、これをオペラ化する構想を温めました。

そして1904年、構想から生まれたオペラ第2作となる『復活』がトリノで初演されます。この作品はアルファーノにとってオペラ作曲家としての初の大きな成功作となり、彼の名前を一躍国内外に知らしめました。抒情性と劇的な表現が見事に融合した『復活』は、その後の彼のキャリアを決定づける重要な作品となり、作曲家の存命中に1000回を超える異例の上演回数を記録しました。この成功を受けて、彼はイタリアのリグーリア州にある風光明媚な都市サン・レモに終の棲家を定めます。

アルファーノの作品の中でも特に重要視されるのが、1921年に初演され、1952年に改訂されたオペラ『サクンタラ』（『サクンタラの伝説』）です。古代インドの詩人カーリダーサのサンスクリット文学にインスピレーションを得たこのオペラでは、アルファーノ自身が台本を手がけ、初期のイタリア・オペラとしては珍しく散文形式で書かれています。この作品には、フランスの作曲家クロード・ドビュッシーからの影響、特にその洗練されたオーケストレーションや和声が見られ、アルファーノの最も円熟した、そして疑いなく最も重要な舞台作品として評価されています。

アルファーノの経歴において、もう一つ特筆すべき出来事は、ジャコモ・プッチーニの未完のオペラ『トゥーランドット』の補筆を依頼されたことです。この補筆は、しばしばプッチーニとの親密な関係や師弟関係に起因すると語られることがありますが、実際にはアルファーノがプッチーニを偉大な先達者として尊敬していたものの、彼自身が弟子であったり、単なる徒弟であったりしたわけではありません。音楽学者らの研究によれば、事の始まりは1925年7月、プッチーニの息子アントニオがサン・レモのアルファーノ邸を訪れ、補筆を正式に依頼したことにあります。この依頼に対し、アルファーノは当初困惑の色を見せたものの、最終的には引き受ける形で、同年8月25日に契約が結ばれました。彼はその困難な作業に取り組み、プッチーニが遺したスケッチやメモをもとに、翌1926年1月までにオーケストレーションを含む結末部分を完成させました。彼が補筆者に選ばれた背景には、プッチーニと同様に有力な音楽出版社リコルディ社と契約しており、中でも彼のオペラ『復活』の成功によって同社からの高い評価を得ていたことが大きく関係しています。しかし、1926年の世界初演を指揮したマエストロ、アルトゥーロ・トスカニーニは、アルファーノによる補筆部分が長いと感じ、その大部分をカットして上演したため、初演ではアルファーノのオリジナルの結末が全て演奏されたわけではありませんでした。その後、アルファーノが書き上げた完全な結末を含む総譜が出版されましたが、後の版ではトスカニーニがカットした短縮版が採用され、現在多くの公演で用いられているのはこの短縮版です。この補筆部分は、しばしばアルファーノの音楽がプッチーニのスタイルと完全に融合しておらず「弱い」と評されることもありますが、プッチーニの遺志を継ぎ、未完の大作に終止符を打つという極めて困難な作業であったことを考慮する必要があります。

オペラ作曲家として最もよく知られているアルファーノですが、交響曲や室内楽、ピアノ曲など、多岐にわたるジャンルで作品を残しています。また、彼は優れた音楽教育者としても後進の指導に尽力しました。ボローニャ音楽院では作曲科教授（1916年 - 1922年）および院長（1918年 - 1922年）を務め、その後トリノ音楽院院長（1923年 - 1939年）、ペーザロ音楽院院長（1946年 - 1950年）を歴任するなど、イタリアの主要な音楽教育機関で要職を務めました。1954年 10月27日、彼は終の棲家であったサン・レモにて80歳でその生涯を閉じました。

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