フランシス・エジャートン (第8代ブリッジウォーター伯爵)

第8代ブリッジウォーター伯爵フランシス・エジャートン

フランシス・ヘンリー・エジャートン（1756年11月11日 - 1829年2月11日）は、第8代ブリッジウォーター伯爵として知られるイギリスの貴族です。彼は、1823年にブリッジウォーター伯爵位を継承し、その名と遺産を歴史に刻みました。

家系と背景

エジャートン家は、ブリッジウォーター伯爵位を有する名門であり、彼の曽祖父は第3代ブリッジウォーター伯爵ジョン・エジャートンでした。祖父はヘレフォードの司教、父はダラムの司教を務めるという、聖職者の家系でもありました。1803年に第3代ブリッジウォーター公爵（第6代ブリッジウォーター伯爵）フランシス・エジャートンが子を残さずに亡くなった際、公爵位は廃絶しましたが、伯爵位は傍流であった彼の兄、ジョン・エジャートンが継承しました。ジョンにも子供がいなかったため、1823年にフランシス・ヘンリー・エジャートンが爵位と資産を引き継ぎ、第8代ブリッジウォーター伯爵となりました。母方の祖父は初代ケント公ヘンリー・グレイです。

生涯

ロンドンで生まれたエジャートンは、イートン・カレッジとオックスフォード大学クライスト・チャーチで学びました。その後、オール・ソウルズ・カレッジのフェローとなり、1781年には王立協会のフェロー、1791年にはロンドン考古協会のフェローに選出されています。学問分野では、1812年に伯爵家の屋敷がある地域の地下水路に関する論文 "Description du Plan Incliné Souterrain" を発表しました。また、フランスやイタリアの文芸に関する古文書を大英博物館に寄贈し、文献購入のための資金も提供しました。

ブリッジウォーター作品

エジャートンの最大の功績は、王立協会に遺した基金でしょう。彼は、"創造の中に示される、神の力と知恵と善良さ"に関する論文集の出版を遺言し、その遺志に従い、8人の科学者がそれぞれの専門分野から自然神学に関する論文を執筆し、"ブリッジウォーター作品（Bridgewater Treatises）"として出版されました。これらの論文は、1833年から1840年にかけて出版され、当時の学術界に大きな影響を与えました。

以下は、"ブリッジウォーター作品"として出版された8つの論文です。

1. トーマス・チャーマーズ: 『外的自然の人間の道徳的・知的状況への適応』
2. ジョン・キッド: 『外的自然の人間の身体的状況への適応』
3. ウィリアム・ヒューウェル: 『自然神学の観点からの天文学・一般物理学』
4. チャールズ・ベル: 『手：意図されたデザインとしての仕組みと有用性』
5. ピーター・マーク・ロジェ: 『自然神学からみた動植物の生理学』
6. ウィリアム・バックランド: 『自然神学からみた地質学、鉱物学』
7. ウィリアム・カービー: 『動物のヒストリー、習性、本能について』
8. ウィリアム・プラウト: 『自然神学からみた化学、気象学、消化作用』

パリでの晩年と奇行

エジャートンは後半生をパリで過ごし、生涯独身でした。そのため、彼の死によってブリッジウォーター伯爵家は途絶えることになりました。パリ時代には、いくつかの奇行が伝えられています。例えば、犬を客として招いた晩餐会を開き、集められた犬たちに最新のファッションの衣装を着せ、小さな靴を履かせたという逸話があります。また、彼は毎日新しい靴に履き替え、脱ぎ捨てた靴を並べて日数を記録していたそうです。さらに、庭に羽を切った鳩を放ち、視力が衰えても射撃の的にできるようにしたという話も残っています。

これらの逸話は、彼の風変わりな人物像を物語っていますが、同時に、彼が文化や学問に対して深い関心を持ち、惜しみなく資金を提供したことは、"ブリッジウォーター作品"の存在によって明らかです。フランシス・エジャートンは、単なる貴族ではなく、学術の発展に貢献した人物として、記憶されるべきでしょう。

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