フランス民主連合

フランス民主連合（UDF）: 中道右派政党の興亡

フランス民主連合（Union pour la Démocratie Française, UDF）は、1978年から2007年まで存在したフランスの中道右派政党です。略称はUDF。ヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領の支持基盤として結成され、その後のフランス政治に大きな影響を与えましたが、党内対立や政界再編を経て、最終的に分裂・消滅という道を辿りました。本稿では、UDFの成立から分裂、消滅に至るまでの歴史、政策、そしてその影響について詳細に解説します。

ジスカール・デスタン政権とUDFの成立

1974年、ジスカール・デスタンはフランス大統領に選出されました。彼はド・ゴール派ではない、初めての第五共和制大統領でした。大統領就任後、ジスカール・デスタンは首相にジャック・シラク（ド・ゴール派）を起用し、政権維持のためド・ゴール派との協調路線を取りました。しかし、両者の関係は次第に悪化していきます。「先進自由主義」を掲げるジスカール・デスタンと、ゴーリズム（ド・ゴール主義）を基調とするシラクとの間には、社会政策、経済政策、外交政策において深刻な溝がありました。

ジスカール・デスタンは、社会政策ではより穏健で融和的な路線を、経済政策では市場重視の自由化路線を、外交政策では欧州統合推進とアメリカとの協調を重視しました。これらの政策は、シラクらド・ゴール派の強い反発を招き、1976年にはシラクが首相を辞任する事態に発展しました。

こうした状況下、ジスカール・デスタンは自身の支持基盤を強化するため、ド・ゴール派に対抗できる勢力としてUDFを結成しました。UDFには、共和党、社会民主中道派、急進党など、非ド・ゴール派の中道右派勢力が集まりました。UDFは、右派から中道左派まで幅広い勢力を含む、いわば寄せ集めの政党でした。しかし、一般的には非ド・ゴール派の中道右派政党と見なされ、議会では共和国連合（RPR、ド・ゴール派政党）のジュニア・パートナー的な位置付けにありました。

UDFの苦闘と分裂

UDFは、当初期待されたほどの成果を上げることができませんでした。党内には、異なるイデオロギーや政策目標を持つ政党が存在し、結束は弱かった。1981年の大統領選挙でジスカール・デスタンが敗北すると、UDFはさらに困難な状況に直面します。1980年代以降、UDFは、RPRとの共闘と対立を繰り返しながら、党内分裂とリーダーシップの不在に苦しみました。レイモン・バール、ジスカール・デスタン、フランソワ・レオタールと、党首は交代しましたが、UDFはまとまりのある政党となることはありませんでした。

1990年代に入ると、UDFはさらに深刻な危機に直面します。1997年の下院議員選挙での敗北をきっかけに、党内は「民主勢力（FD）」と「自由民主党（DL）」に分裂。その後、DLの多くが離党し、FDと残留した議員の一部が再編してUDFが再出発するものの、2002年には国民運動連合（UMP）が結成されると、多くのUDF議員がUMPに移籍しました。

最終的な分裂と消滅

2007年大統領選挙で、フランソワ・バイル率いるUDFは健闘を見せました。バイルは、UDFを解消し、新たな中道政党「民主運動」を結成することを表明。しかし、UDF所属議員の大半は、サルコジ大統領を支持する「新中道」を結成し、UDFは完全に分裂しました。2007年末、UDFは事実上解散し、民主運動が後継政党となりました。ただし、上院にはUDF所属議員が一定数残っており、公式には存続していましたが、後に消滅しました。

UDFを構成した主要政党

UDFを構成した主要政党には、共和党、社会民主中道派、急進党などがありました。これらの政党は、それぞれ異なる歴史とイデオロギーを持っていましたが、UDF結成時には、ジスカール・デスタンの下で一時的に結束しました。しかし、UDF内部でのイデオロギーや政策目標の違いは、UDFの分裂の大きな原因の一つとなりました。

まとめ

UDFは、フランス政治において重要な役割を果たした政党でしたが、その歴史は党内対立と分裂の歴史でもありました。UDFの興亡は、フランスの政党政治の流動性と、政党再編の困難さを示す一つの例と言えるでしょう。UDFの経験は、今日のフランス政治にも重要な示唆を与えています。

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