フランス科学アカデミーによる測地遠征

フランス科学アカデミーによるエクアドル測地遠征：地球の形状解明への挑戦

18世紀、地球の形状をめぐる論争が科学界を席巻していました。フランス科学アカデミーでは、地球が極方向に扁平か、赤道方向にふくらんだ形状をしているかという議論が白熱していました。この論争に決着をつけるため、フランス国王ルイ15世の命により、2つの遠征隊が派遣されました。1つは北極圏のラップランドへ、もう1つは赤道直下のエクアドルへ。本稿では、後者であるエクアドル遠征隊の壮大な挑戦と、その成果について詳述します。

地球の形状を巡る論争と遠征隊の編成

フランスの天文学者ジャック・カッシーニは、地球が極方向に長い長球体だと主張していました。この説に異議を唱える声も多く、正確な地球形状の解明が喫緊の課題となっていました。そこで、フランス科学アカデミーは、異なる緯度での精密な測量によって地球の形状を決定しようと計画しました。

エクアドル遠征隊は、フランスの天文学者シャルル＝マリー・ド・ラ・コンダミーヌ、ピエール・ブーゲ、ルイ・ゴダン、そしてスペインの地理学者ホルヘ・フアン、アントニオ・デ・ウッロアらによって率いられました。彼らに加え、植物学者ジョセフ・ド・ジュシューや、ルイ・ゴダンの親族も参加するなど、多様な専門家からなる精鋭チームが編成されました。

困難な道のり：アマゾン熱帯雨林とアンデス山脈を越えて

1735年5月、遠征隊はフランスを出発。カリブ海沿岸からパナマへ、そして太平洋を経てエクアドルへと向かいました。彼らの旅路は困難を極めました。熱帯雨林の瘴気、アンデス山脈の険しい地形、そして予想だにしないトラブルが彼らを待ち受けていました。

エクアドルに到着した隊員たちは2つのグループに分かれ、キト付近から南部のクエンカまでの子午線弧の長さを測定しました。この測量は、過酷な環境の中、精密な機器と高度な技術を用いて行われました。ラ・コンダミーヌは、エクアドルの測量技師ペドロ・マルドナドとともにアマゾン川を下る航海を行い、貴重な地理的情報を収集しました。

測量の結果と遠征隊員の帰国

1739年、エクアドルでの測量は完了しました。その結果、地球が極方向に扁平な回転楕円体であることが確認されました。これは、ラップランドで測量を行ったモーペルテュイの遠征隊の結果とも一致していました。しかし、天文観測上の問題から、隊員たちはエクアドルにさらに数年間滞在することになりました。

帰国の道も容易ではありませんでした。ブーゲはカリブ海経由でフランスへ帰還しましたが、ラ・コンダミーヌとマルドナドはアマゾン川を下って帰国しました。ゴダンはリマで教授の職に就き、地震からの復興にも貢献しました。それぞれの隊員が体験した困難と発見は、後に出版された探検記によって広く知られるようになりました。

科学的成果と歴史的意義

この遠征は、近代科学における最初の主要な国際協力事業の1つとして高く評価されています。地球の正確な大きさを初めて明らかにしただけでなく、アマゾンの地理、動植物、そしてインカ遺跡に関する貴重な情報を収集しました。キニーネの効用の発見や、天然ゴムの識別なども、この遠征隊の成果の一部です。

遠征隊員たちが記した探検記は、ヨーロッパの人々の視野を広げ、後の探検家たちに大きな影響を与えました。アレクサンダー・フォン・フンボルトも、この遠征に刺激を受けた一人です。

測地遠征のレガシー

19世紀末には、フランス科学アカデミーはさらなる調査のためにエクアドルへ新たな遠征隊を派遣しました。そして、遠征隊の功績を記念するピラミッドが、エクアドルに建てられました。これらの記念碑は、地球の形状解明に貢献したこの偉大な科学的探求の証として、現在も残されています。

フランス科学アカデミーによるエクアドル測地遠征は、国際的な科学協力の成功例であり、地球科学の発展に多大な貢献をした歴史的出来事と言えるでしょう。その功績は、現代においても私たちに大きな影響を与え続けています。

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