フランス領南方地域国立自然保護区

フランス領南方地域国立自然保護区：亜南極の楽園

フランス領南方・南極地域（TAAF）の国立自然保護区は、クローゼー諸島、ケルゲレン諸島、サンポール・ヌーヴェル・アムステルダム諸島の陸地と周辺海域を含む、広大な面積を誇る保護区です。2006年に設立され、2019年にはユネスコの世界遺産に登録されました。その面積は、陸地約70万ヘクタール、海域約6660万ヘクタール、合計約6730万ヘクタールにも及び、フランス国内の保護区の中でも最大規模を誇ります。

目的と重要性

この保護区の主要な目的は、地球規模で重要な生物多様性を有するこの地域の自然を効果的に保護し、管理することです。特に、多くのクジラ類の重要な生息地であることから、クジラ類の保護にも大きく貢献しています。

人間の活動拠点から遠く離れた亜南極の島々は、独特の動植物相の宝庫となっています。手つかずの自然が残り、豊かな海洋生物相は科学的にも保全上も非常に重要な価値を持っています。

生息する動植物

この保護区には、イートンオナガガモ（亜種を含む）、アムステルダムアホウドリ、オウサマペンギン、ヒガシキバナアホウドリなど8種もの固有種を含む様々な海鳥が生息しています。また、ミナミゾウアザラシ、アナンキョクオットセイ、イロワケイルカなどの海洋哺乳類も確認されています。陸地では、アムステルダム島において Phylica arborea などの植栽も行われています。

保護区の範囲

陸地部分

陸地部分は、クローゼー諸島、ケルゲレン諸島、サンポール・ヌーヴェル・アムステルダム諸島の全島嶼を含み、300以上の島々から構成され、総面積は約7633平方キロメートルに及びます。最高地点は、ケルゲレン諸島にあるグランド・テル島のモン・ロス（ロス山、1850メートル）です。

海洋部分

海洋部分は、各島嶼周辺の海域を包括的に指定されています。具体的な範囲は、各島嶼について、複数の緯度・経度座標によって定義されています。（本文では、クローゼー諸島、ケルゲレン諸島、サンポール・ヌーヴェル・アムステルダム諸島それぞれについて、複数の緯度経度座標がリストアップされていますが、本文量を圧縮するためここでは割愛します。）

歴史と管理

この自然保護区は2006年10月3日に設立され、2016年には保護区の境界線が拡大されました。2008年には、一部地域がラムサール条約登録地にも指定されています。現在、フランス領南方・南極地域(TAAF)によって管理されています。

世界遺産登録

2019年の第43回世界遺産委員会において、「フランス領南方地域の陸と海」として世界遺産に登録されました。フランスの自然遺産としては5番目、フランスの海外県・海外領土の世界遺産としては4番目の登録となります。

登録基準

この世界遺産は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
* (10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。

この保護区は、その広大な面積と豊かな生物多様性、そして手つかずの自然によって、地球規模での保全活動にとって極めて重要な役割を担っています。今後も、この貴重な自然遺産の保護と管理が継続されることが期待されます。

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