フランソワ1世の聖家族

フランソワ1世の聖家族

『フランソワ1世の聖家族』は、1518年にラファエロ・サンティによって制作された絵画で、現在はパリのルーヴル美術館に所蔵されています。本作は聖家族を中心に、聖エリサべトや幼児洗礼者ヨハネ、さらに二人の天使が描かれているのが特徴です。作品の中にはラファエロの署名と制作年が記されていますが、実際には彼の工房の弟子たちが作品の多くを仕上げたと考えられています。

この絵画は、ローマ教皇レオ10世の甥でありフランス宮廷の大使であったロレンツォ2世・デ・メディチから、フランス王フランソワ1世の王妃クロードに贈られたものです。この背景を持つ作品は、「悪魔を倒す聖ミカエル」というもう一つの作品と共に制作されており、1518年の春遅くにリヨンへ向けて出帆しました。

作品の中で、幼子イエス・キリストは不安そうな様子で、フランス王家のシンボルであるユリをあしらった揺りかごから、立膝をつく聖母マリアの腕に這い上がっています。その隣には、老母エリサべトに支えられた幼いヨハネが、イエスを崇拝している姿が描かれています。右側には、物思いにふけるヨセフが情景を静かに見つめており、左上には天使が聖母マリアの上に花束を掲げています。この花束は愛と生命の象徴とされています。

また、ラファエロの最大のライバルであったセバスティアーノ・デル・ピオンボは、これら二つの作品について批判を寄せています。彼は1518年にミケランジェロに宛てた手紙の中で、ラファエロ作品がミケランジェロの芸術と真っ向から対立していると述べ、描かれた人物がまるで霧の中にあるかのように見える、金属的な質感が感じられると指摘しました。

『フランソワ1世の聖家族』には、ラファエロが描いた幼子イエスの下絵が残されています。とはいえ、実際の制作は多くの部分で弟子ジュリオ・ロマーノに依存していると広く認識されています。金属的な質感や、鮮明でありながら冷たさを感じる色調はジュリオに特有のものであり、ラファエロが手掛けた部分は全体から見ると少ないと考えられます。時には、作品全体が彼の弟子による成果である可能性すら示唆されています。作品はその後、フランチェスコ・プリマティッチオによって修復が行われました。

参考文献

• - 中山公男・佐々木英也責任編集『NHKルーブル美術館IV ルネサンスの波動』
• - ジェームズ・H・ベック　若桑みどり訳『世界の巨匠シリーズ　ラファエㇽロ』
• - 池上英洋『もっと知りたいラファエッロ　生涯と作品』
• - 越川倫明・松浦弘明・甲斐教行・深田麻里亜『ラファエロ　作品と時代を読む』

外部リンク

• - ルーヴル美術館公式サイト
• - Web Gallery of Art
• - ウィキメディア・コモンズのフランソワ1世の聖家族に関するカテゴリ

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