フランツ・アントン・ホフマイスター

フランツ・アントン・ホフマイスター（1754年5月12日 - 1812年2月9日）は、18世紀後半から19世紀初頭にかけて活動したドイツ生まれの作曲家であり、ウィーンを拠点とした有力な楽譜出版者としても知られています。

神聖ローマ帝国領（現在のドイツ、バーデン＝ヴュルテンベルク州）のロッテンブルク・アム・ネッカーに誕生したホフマイスターは、14歳で法律を学ぶため帝都ウィーンに赴きました。しかし、ウィーンの活気あふれる音楽環境に触れるうち、音楽を生涯の仕事とすることを決意します。多岐にわたる作品を生み出し、1780年代にはウィーンで最も人気のある作曲家の一人としての地位を確立しました。しかしながら、今日におけるホフマイスターの評価は、作曲家としての業績に加え、その音楽出版者としての功績に重きが置かれています。

1785年頃、ホフマイスターはウィーンで音楽出版事業を開始しました。これは当時の主要な出版社のひとつであったArtaria社の設立から数年後のことでした。彼は自身の作品に加え、当時の著名な作曲家、例えばヨーゼフ・ハイドン、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、ムツィオ・クレメンティといった大家たちの作品を積極的に世に送り出しました。これらの作曲家たちとは個人的な親交も深く、モーツァルトはホフマイスターに弦楽四重奏曲第20番 KV 499を献呈し、フルート四重奏曲 KV Anh. 171 (285b) の変奏曲にはホフマイスターの歌曲主題を用いています。また、ベートーヴェンは彼を「もっとも愛しい兄弟」と手紙で呼びかけるなど、深い信頼関係がうかがえます。

1791年には出版活動が最も活発になりましたが、その後は作曲への傾倒が深まったとされています。1790年代初頭にはオペラ作品を多く作曲・上演しましたが、経営手腕に恵まれなかったこともあり、次第に作曲数は減少していきました。

1799年、ホフマイスターはフルート奏者のフランツ・トゥルナーと共にロンドンへの演奏旅行を計画しましたが、道中のライプツィヒでオルガン奏者のアンブロージウス・キューネルと出会い、計画を変更します。彼らはライプツィヒで新たな音楽出版事業を共同で立ち上げることを約束し、Bureau de Musique（ビュロー・ドゥ・ミュジック）を設立しました。この出版社は後に著名なC. F. ペータース社へと発展し、現在も存続しています。ビュロー・ドゥ・ミュジックは1802年にヨハン・ゼバスティアン・バッハの鍵盤楽曲集第1巻を出版するなど、重要な活動を行いました。ホフマイスターは1805年までウィーンとライプツィヒを行き来していましたが、同年3月にはビュロー・ドゥ・ミュジックにおける独占的な所有権をキューネルに譲渡しました。これは経営が困難になりつつあったウィーンの事業に関心が向けられていたためとされます。ウィーンの会社も、1806年には作曲に時間を割くためChemische Druckereyに売却したと言われています。

1812年、ホフマイスターはウィーンでその生涯を閉じました。作曲家としての彼の業績は同時代の人々からも高く評価されており、没年に出版されたエルンスト・ルートヴィヒ・ゲルバーの「Neues Lexikon der Tonkünstler」（音楽家のための新しい用語集）では、「彼の多種多様な作品を一目見れば、この作曲家の勤勉さと聡明さを賛美することだろう」と述べられています。ゲルバーは続けて、ホフマイスターが「豊かな感情表現だけでなく、面白さ、楽器の巧みな使い分け、そして実用性に富んだ作品によって、正当な評価を得た」と記し、特に「あらゆる楽器の名手であったかのような楽器に関する深い知識」を称賛しています。

ホフマイスターの残した膨大な作品群は多岐にわたります。特に有名なのはフルートのための作品で、協奏曲やフルートを主役とする室内楽曲が数多く含まれます。これらの作品は、フルートを魅力的な楽器と考えたウィーンの多くのアマチュア音楽家のために作曲されたと考えられています。フルート作品以外にも、少なくとも8つのオペラ、50以上の交響曲、多数の協奏曲（うちフルート協奏曲は25曲以上、その他ヴィオラ協奏曲など）、多くの室内楽、ピアノ曲、そして歌曲集など、様々なジャンルで意欲的な創作活動を行いました。彼の作品は、同時代の音楽様式に根ざしつつ、楽器の特性をよく理解した実用性と魅力に満ちています。

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