フリッツ・ザウケル

エルンスト・フリードリヒ・クリストフ・ザウケル：強制労働の担い手

エルンスト・フリードリヒ・クリストフ・ザウケル（1894年10月27日 - 1946年10月16日）は、ナチス・ドイツにおいて、労働力配置総監およびテューリンゲン大管区指導者という重要な地位を歴任した政治家です。彼の活動は、第二次世界大戦中の強制労働に深く関わり、戦後のニュルンベルク裁判でその責任を問われることとなりました。

生い立ちと初期のキャリア

ザウケルは、バイエルン王国のハッスフルトで、郵便局員の息子として生まれました。15歳で家計を助けるために学校を中退し、船員として世界中を旅しました。第一次世界大戦ではドイツ軍に従軍し、フランス軍の捕虜となります。

戦後、1921年にナチ党に入党し、党員番号は1,395でした。工場労働者として働く傍ら、ナチ党の活動に熱心に取り組み、その功績が認められて幹部としての地位を確立していきます。1927年にはテューリンゲン大管区指導者に就任し、同地区はヴァイマル政府に対する抵抗拠点となりました。1932年にはテューリンゲン州首相、1933年には同州の国家代理官を歴任。また、親衛隊名誉中将（1934年）、突撃隊名誉大将（1937年）、親衛隊大将（1942年）の称号も与えられています。

労働力配置総監としての役割

1942年3月21日、ザウケルは労働力配置総監に任命され、軍需大臣アルベルト・シュペーアの軍需生産拡大を支援するため、占領地からの労働力確保に奔走します。彼の指揮下で、ヨーロッパ各地から約500万から700万人の労働者が強制的にドイツへ連行され、劣悪な環境下で働かされました。この強制労働は、ナチス・ドイツの戦争遂行を支える重要な要素となりました。

ニュルンベルク裁判と処刑

第二次世界大戦後、ザウケルは逮捕され、ニュルンベルク裁判で裁かれることになります。彼は強制収容所の存在や強制労働への関与を否定しましたが、「住民とユダヤ人の強制連行」の罪で有罪判決を受けました。1946年10月1日に絞首刑を宣告され、同月16日に刑が執行されました。

裁判中、ザウケルの東フランケン地方の訛りが強く、通訳や裁判官が理解に苦しむ場面もあったと伝えられています。彼は、同じく被告人であったシュペーアが比較的軽い懲役刑で済んだことに不満を抱いていました。

獄中では、自らの心情を綴った手記を残しています。その中で、彼は反ユダヤ主義的な感情を持っていたことを否定していますが、過去の発言との矛盾も指摘されています。彼は自身を国家社会主義者であり、祖国を愛する理想主義者であると捉え、ヨーゼフ・ゲッベルスやハインリヒ・ヒムラー、マルティン・ボルマンがいなければ、アドルフ・ヒトラーは「ドイツ史で最も栄光のある人物」になっていただろうと述べています。

死刑判決を受けたザウケルは動揺を隠せず、同じく死刑判決を受けたアルトゥル・ザイス＝インクヴァルトに励まされるほどでした。最期の言葉は、「私は無実のうちに死ぬ。死刑は不当だ。神よドイツを守りたまえ！」でした。彼の遺体は、他の死刑囚と共に火葬され、遺灰は川に流されました。

ニュルンベルク刑務所の心理分析官グスタフ・ギルバート大尉による知能検査では、ザウケルの知能指数は118であり、被告人の中では下位に位置していました。

ザウケルの遺産

エルンスト・フリードリヒ・クリストフ・ザウケルは、ナチス・ドイツの労働力政策を主導し、数百万人の人々を強制労働に駆り出した人物として、歴史に名を刻んでいます。彼の行動は、現代においても戦争犯罪、人道に対する罪として深く記憶され、教訓として語り継がれています。

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