フリーホイーリン・ボブ・ディラン

ボブ・ディランの出世作『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』

1963年に発表されたボブ・ディランの2枚目のスタジオアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』は、彼のキャリアを決定づけた重要な作品です。このアルバムは、ディランを一躍有名にした「風に吹かれて」をはじめ、「北国の少女」「戦争の親玉」「はげしい雨が降る」「くよくよするなよ」など、後の音楽シーンに大きな影響を与える楽曲が多数収録されています。

アルバムの背景と特徴

このアルバムは、単なるフォークソングにとどまらず、社会的なメッセージと内面的な感情を深く掘り下げた作品として高く評価されています。「風に吹かれて」のようなプロテストソングで「フォークの貴公子」としての地位を確立した一方で、「くよくよするなよ」では恋愛における心の葛藤を、「はげしい雨が降る」では混沌としたイメージを表現し、その多才さを示しました。

ジャケットには、当時の恋人であるスーズ・ロトロと共にニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジで撮影された写真が使用されています。この写真は、2人が住んでいたアパートの近くで撮影され、当時のディランの生活と密接に結びついた象徴的な一枚となっています。

収録楽曲

Side 1
1. 風に吹かれて - Blowin' in the Wind
2. 北国の少女 - Girl from the North Country
3. 戦争の親玉 - Masters of War
4. ダウン・ザ・ハイウェイ - Down the Highway
5. ボブ・ディランのブルース - Bob Dylan's Blues
6. はげしい雨が降る - A Hard Rain's a-Gonna Fall
7. くよくよするなよ - Don't Think Twice, It's All Right

Side 2
1. ボブ・ディランの夢 - Bob Dylan's Dream
2. オックスフォード・タウン - Oxford Town
3. 第3次世界大戦を語るブルース - Talking World War III Blues
4. コリーナ、コリーナ - Corrina, Corrina
5. ワン・モア・チャンス - Honey, Just Allow Me One More Chance
6. アイ・シャル・ビー・フリー - I Shall Be Free

これらの楽曲は、ディランの作詞・作曲によるものが中心ですが、トラディショナルソングを改作したものも含まれています。

レコーディング・セッション

アルバムのレコーディングは、1962年4月から1963年4月にかけて、ニューヨークのコロムビア・レコーディング・スタジオで行われました。初期のセッションでは、「サリー・ギャル」や「ランブリング・ギャンブリング・ウィリー」などが録音されました。

1962年7月には、「風に吹かれて」や「ダウン・ザ・ハイウェイ」などの重要な楽曲が録音され、10月にはブルース・ラングホーンらのバックバンドを導入した初めてのレコーディングが行われました。

1963年4月には、プロデューサーがジョン・ハモンドからトム・ウィルソンに交代し、「北国の少女」や「戦争の親玉」などが録音されました。アルバムのプロモーション用テスト盤には、初期のセッションで録音された曲も含まれていましたが、最終的には4月のセッションの曲に差し替えられました。

楽曲解説

• - 風に吹かれて: ディランの代表曲の一つで、社会的なメッセージを込めた普遍的な歌詞が特徴です。
• - ダウン・ザ・ハイウェイ: ブルース形式の自作曲で、自身の苦悩と成長を描いています。当時の恋人スーズ・ロトロへの想いが歌詞に込められています。
• - はげしい雨が降る: 混沌としたイメージが広がる、文学的な歌詞が印象的な楽曲です。
• - くよくよするなよ: 失恋をテーマにした、内面的な感情を表現した楽曲です。

反響と評価

アルバムはリリース後、各方面から高い評価を受けました。特に「風に吹かれて」はピーター・ポール&マリーによってカバーされ大ヒットし、ディランの名を広く知らしめるきっかけとなりました。アルバム自体もビルボードのトップLP'sチャートで22位を記録し、全英アルバムチャートでは1位を獲得しました。

また、このアルバムはビートルズにも大きな影響を与えました。ジョン・レノンは、パリ公演中にポール・マッカートニーからこのアルバムを聴き、ディランに夢中になったと語っています。

このアルバムは、アメリカレコード協会（RIAA）によってプラチナディスクに認定され、アメリカ議会図書館の「全米録音資料登録簿」にも選出されています。ローリングストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では97位にランクインするなど、音楽史に残る名盤として評価されています。

その他の情報

• - アルバムのジャケット写真は、ドン・ハンステインによって撮影されました。
• - ライナーノーツはナット・ヘントフによって書かれました。
• - 日本では1968年にオリジナル通りのジャケット、曲順でリリースされました。

『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』は、ボブ・ディランの音楽キャリアにおいて重要なターニングポイントとなり、フォークソングの枠を超え、社会現象を巻き起こした作品として、今もなお多くの音楽ファンに愛され続けています。

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