フルサイズバン

フルサイズバン

フルサイズバン（Full-size van）は、主にアメリカ合衆国における自動車の分類において使用される呼称です。一般的にミニバンよりも大幅に大きい車両を指し、その最も顕著な特徴は、非常に大きな積載容量や、多数の乗員を収容できる定員にあります。外観は概して、車体に対して極めて短いボンネットと、後方に向けて箱型に広がるスクエアな形状をしています。

車両特性

近年のフルサイズバンの主流モデルに見られる共通の特性としては、全長が5メートルから6メートル程度の堂々たるサイズであること、そして大排気量のV型8気筒エンジン（排気量は通常4リットルから6リットル級）を搭載していることが挙げられます。トランスミッションはほぼ全てのモデルでオートマチックが採用されており、駆動方式には主に高い耐久性と積載時の安定性に優れる後輪駆動（FR）が用いられています。

歴史的経緯

フルサイズバンの歴史は、1960年代初頭のアメリカの自動車市場において、フォルクスワーゲン・タイプ2のような欧州製のコンパクトなバンが一定の支持を得ていた時代に遡ります。これに対抗する形で、アメリカ国内メーカーは自社のコンパクトカーや大衆車をベースとしたバンを開発・投入しました。しかし、より広大な国土と、それに伴う物資輸送や多人数移動のニーズの高まりに応えるため、より大型で堅牢なバンが求められるようになります。こうして、従来のコンパクトなバンに取って代わる形で登場したのが、現在のフルサイズバンにつながるモデル群です。

真に「フルサイズ」と呼ぶにふさわしい最初のモデルとして広く認識されているのは、1969年にフォード社から発売されたエコノラインです。このモデルは、同社のロングセラーであるピックアップトラック、フォード・Fシリーズのプラットフォームを基礎として開発されました。エコノラインの成功を受けて、ゼネラルモーターズ（GM）やダッジといった他のアメリカ大手自動車メーカーも追随し、同様のコンセプトに基づいた大型バンを次々と市場に投入していきました。

市場動向

初代エコノラインの登場以来、アメリカのフルサイズバン市場は、「ビッグ・スリー」と総称されるフォード、GM、そしてクライスラー（現在はステランティス傘下）といった主要メーカーによって長年にわたり牽引されてきました。特に、フォードのEシリーズ（後のトランジットなど、複数の世代や派生車種を含む）と、GMのシボレー・エクスプレスおよびその兄弟車であるGMC・サバンナは、このカテゴリーの代表的なモデルとして長く君臨し、市場の大部分を占有する状況が続いています。

フルサイズバンは、その圧倒的な積載能力や乗車定員から、商用バンとして荷物輸送や作業車両に利用されるほか、乗用仕様では空港送迎やシャトルバス、さらにはキャンピングカーのベース車両としても広く活用されており、アメリカ社会における多目的な輸送手段として重要な位置を占めています。


参考文献

（元の情報には参考文献の具体的な記述がありませんでした。）

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