聖書のみ

聖書のみ（Sola Scriptura）

「聖書のみ」（Sola Scriptura）は、信仰義認、万人祭司と並び、プロテスタント宗教改革の三大原理の一つとして知られています。この原則は、キリスト教の信仰と実践において、聖書が唯一無二の権威を持つと主張するものです。

カトリックとプロテスタントの対立

ローマ・カトリック教会は、「聖書と聖伝」を信仰の基礎としていますが、プロテスタントはこれに対し、「聖書のみ」を主張します。カトリック教会が聖書に外典を加えるのに対し、プロテスタントは66巻の聖書を正典とします。また、カトリック教会が教会の権威によって聖書が決定されたと主張するのに対し、プロテスタントは聖書自身がその正当性を証すると考えます。これは、聖書のアウトピストス（自己証明）の概念に基づいています。

プロテスタントの「聖書のみ」の原則は、カトリック教会への反発として生まれた側面があります。このため、この原則はしばしばカトリック教会との対比において語られます。しかし、正教会も聖伝を重視し、旧約聖書の外典を認める点で、プロテスタントとは異なる立場を取っています。ただし、正教会は聖書を聖伝の一部として位置づけており、カトリック教会の「聖書と聖伝」とは若干異なるニュアンスを持っています。

聖書解釈における霊的意味と字義通りの意味

中世のカトリック教会では、聖書を「字義通りの意味」「寓話的意味」「類型的意味」「かくれたる意味」の4つの意味で解釈することが定式化されていました。このうち、字義通りの意味を除く3つの意味は「霊的意味」と総称されました。しかし、ウィリアム・ティンダルは、霊的意味の解釈と字義通りの解釈の併存は、あたかも聖書が4冊あるかのように聖書解釈を混乱させると考えました。宗教改革者たちは、霊的意味を教皇権の象徴として批判し、プロテスタントでは、聖書を各個人が内なる聖霊の助けを借りて、字義通りに解釈することを原則としました。この考え方は、聖書をより直接的、個人的に理解することを目指すものです。

まとめ

「聖書のみ」の原則は、プロテスタントの信仰を特徴づける重要な要素です。聖書を唯一の権威とすることで、信仰の拠り所を明確にし、各個人が聖書に直接向き合うことを促します。この原則は、宗教改革の精神を体現するものであり、現代のプロテスタントの信仰形成にも大きな影響を与え続けています。

参考文献

『福音主義キリスト教と福音派』 宇田進 いのちのことば社
『現代福音主義神学』 宇田進 いのちのことば社
『岡田稔著作集』岡田稔 いのちのことば社
『聖書の教理』 尾山令仁 羊群社
"Sola Scriptura' in History and Today" God's Inerrant Word　ジェームス・パッカー

関連項目

五つのソラ
* 聖書解釈学

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