フルン湖

フルン湖（呼倫湖）

フルン湖は、中国内モンゴル自治区北東部のフルンボイル市に位置する、広大な淡水湖です。モンゴル語では「ダライ・ノール」とも呼ばれ、その大きさから「海のようだ」という意味を持ちます。湖の長さは約90キロメートル、幅は約30キロメートルに及び、面積は2,339平方キロメートルと、内モンゴル自治区で最大、中国全体でも有数の規模を誇る淡水湖です。

水系と地形

フルン湖は、フルンボイル草原の只中に位置し、周辺にはヘルレン川とウルソン川という2つの主要な河川が流れ込んでいます。ヘルレン川はモンゴル国東部から、ウルソン川は中国とモンゴル国境のボイル湖から流れ込みます。フルンボイルという地名は、このフルン湖とボイル湖という2つの湖に由来します。湖岸は平坦で、石や砂に覆われており、水深は平均して6メートルから9メートル程度です。冬季には1メートル以上の厚さの氷が張り、11月上旬に凍結し、5月初旬に解凍されます。

通常、フルン湖は出口のない湖であり、ヘルレン川は内陸水系を形成しますが、雨量の多い年には、湖の北部から水があふれて、扎蘭鄂羅木河（達蘭鄂羅木河）という河川を通じて、30キロメートル離れたアルグン川へと流れ込みます。

産業と環境

フルン湖は、古くから漁業が盛んで、中国でも指折りの内陸漁業の拠点となっています。1995年には年間7,000トンもの水揚げがあったとされています。また、エビやザリガニ、真珠などの水産資源も豊富です。近年では観光地としても人気を集めており、北京や上海などからの観光客が夏に多く訪れます。湖周辺では、満洲里市が最大の拠点となっています。

フルン湖には、魚類をはじめとする水生生物、ツルやハクチョウなどの水鳥が数多く生息しており、周辺の草原にはシバムギモドキなどの植物が生い茂り、モウコガゼルやノガンなどの動物も暮らしています。この豊かな生態系を保護するため、1986年にダライ湖自然保護区が設けられ、1992年には国家級自然保護区に格上げされました。さらに、1994年にはモンゴル、中国、ロシアの3カ国が共同で「CMRダウール国際自然保護区」を設置し、2002年にはダライ湖自然保護区がユネスコの生物圏保護区とラムサール条約に登録されました。

しかし、近年では気候変動や人為的な経済活動の影響により、フルン湖の生態環境は悪化しており、水域面積の縮小や水質の悪化が問題となっています。

歴史と呼称

フルン湖周辺には、先史時代から人類が居住しており、歴史的な記録も多く残されています。『山海経』には「大澤」として、『元朝秘史』には「コレン湖」として登場します。時代とともにさまざまな名前で呼ばれてきましたが、現在のモンゴル族は「ダライ・ノール（達頼諾爾）」と呼んでいます。この名称は「海のような湖」という意味で、その広大さを表しています。一方、「フルン湖（呼倫湖）」という名称は比較的新しく、カワウソを意味するモンゴル語の「フルン」に由来します。

この地域は、チンギス・カンの時代には、彼の弟たちに分与され、モンゴル高原統一以前はタタル部族が拠点を置いていました。1221年には、全真教の長老である丘処機が、チンギス・カンの弟であるテムゲ・オッチギンのもとを訪れており、この地域が重要な場所であったことが伺えます。

まとめ

フルン湖は、広大な面積と豊かな生態系を持つ重要な湖です。その歴史的な価値や、周辺地域の人々の生活、そして生態系の保護の観点からも、非常に重要な存在と言えるでしょう。しかし、環境問題にも直面しており、今後の保護活動が重要な課題となっています。

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