フルーツ魚

フルーツ魚とは

フルーツ魚とは、養殖魚特有の臭みを軽減するために、餌に果物やその加工品を混ぜて育てられた食用魚のことです。この養殖方法は、魚の臭みを抑えるだけでなく、果物の香りを魚肉に移すという画期的な発想から生まれました。2007年に鹿児島県で販売された「柚子鰤王」がその先駆けとして知られています。

フルーツ魚の誕生

高知大学の研究により、果物に含まれるポリフェノールに魚の変色を抑える効果があることが発見されました。この技術を応用し、魚の餌に柑橘類などを混ぜることで、魚の生臭さを抑え、さらに果物の香りを付与することに成功しました。この技術は、魚の変色防止から始まりましたが、魚嫌いの人でも食べやすいように、魚の臭みを抑えること、そして香りをつけるという目的へと発展しました。

さまざまなフルーツ魚

フルーツ魚は、ブリ、カンパチ、ヒラメ、マハタ、鮎など、さまざまな魚種で試みられています。また、使用される果物も、ミカン、ユズ、スダチ、カボス、レモンなど多岐にわたります。中には、オリーブやハーブを用いた養殖魚も存在します。

柑橘系のフルーツ魚

特に、柑橘類を用いたフルーツ魚は「柑橘系養殖魚」とも呼ばれ、多くの種類が開発されています。

みかん
ひめ柑育ち: 愛媛県で養殖されたマハタやマダイで、みかんの香りが特徴です。魚の活力が上がり、身が締まって旨みが強いのが特徴です。
みかんブリ: 愛媛県水産研究センターが開発。伊予柑や温州みかんの搾りかすを餌に混ぜて育てられます。鮮度保持効果や、色落ちしにくい効果があります。
ゆず
柚子鰤王: 高知県と鹿児島県で開発されたブリで、柚子の香りが特徴です。抗酸化作用により鮮度を保ち、生臭さを抑えます。
ゆずかんぱち：高知県で養殖されているカンパチ。
すだち
すだちブリ: 徳島県で養殖されているブリで、スダチの香りが特徴です。ビタミンEが豊富で、脂っぽさが抑えられ、さっぱりとした味わいです。
かぼす
かぼすヒラメ・かぼすブリ: 大分県で養殖されています。カボスの抗酸化作用により、血合いの変色が遅くなり、魚からはカボスに含まれる香り成分が検出されます。
レモン
レモンのブリ・かんぱち: 和歌山県産のレモンを用いて高知県で養殖されたものが販売されています。レモンの香りが特徴です。
レモンはまち: 広島県で研究されているハマチで、レモンに含まれるビタミンCに着目しています。
直七
直七マダイ・カンパチ: 高知県宿毛市で養殖されているマダイとカンパチで、直七の香りが特徴です。
柑味鮎：山口県で養殖されている鮎で、みかんの果皮抽出物を餌に混ぜることで、調理時に柑橘系の香りがします。内臓の苦味も少ないのが特徴です。

その他のフルーツ魚

柑橘類以外にも、以下のようなフルーツを用いた養殖魚も存在します。

ブドウ: ブドウ由来のポリフェノールに着目し、ニジマスなどのマス類やカンパチなどの養殖に利用されています。
鯛一郎クン：愛媛県で養殖されているタイで、餌に果物も使用されています。

フルーツ魚のメリット

フルーツ魚は、以下のようなメリットがあります。

生臭さの軽減: 果物の香り成分で魚の生臭さを抑え、魚嫌いの人でも食べやすくなります。
鮮度保持効果: 果物の抗酸化作用により、魚の変色を遅らせ、鮮度を長く保てます。
味の向上: 果物の香りが魚肉に移り、風味が豊かになります。また、旨味成分が増加することもあります。
新たな需要の開拓: 従来の魚のイメージを覆し、新たな顧客層の開拓につながります。

今後の展望

フルーツ魚は、その特異性と美味しさから、今後ますます注目を集めることが予想されます。養殖技術の進歩とともに、さらに多くの種類のフルーツ魚が登場し、食卓を豊かにしてくれるでしょう。

脚注

注釈
フルーツ魚の定義は、養殖魚の臭み消しのために果物を与えるという点にあり、必ずしも果物の香りがするとは限らない。
出典
山下亜純、2013年、「柑橘系ブリ類の拡大と課題 中国から日本へのカンパチ稚魚の流通 -採捕・育成から輸入・流通まで-」、『月刊養殖ビジネス』2013年9月号、緑書房
関連図書
なし
関連項目
オリーブハマチ
長崎ハーブ鯖
かぼすヒラメ
かぼすブリ
外部リンク
ワールドビジネスサテライト特集：魚大国ニッポン復権へ - テレビ東京 2012年12月11日（TV動画）
ひめ柑育ち（ミカン）マハタプロジェクトについて - 愛媛大学農学部 応用生命化学専門教育コース 動物細胞工学教育分野
* オリーブハマチの話 (PDF) - 香川県 2011年12月18日

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