フレデリック・ストック

フレデリック・ストック（1872年11月11日 - 1942年10月20日）は、ドイツのユーリヒに生まれ、後にアメリカで活躍した指揮者・作曲家です。

生い立ちと音楽教育

軍楽隊長の父から音楽の手ほどきを受け、13歳でケルン音楽院に入学。ヴァイオリンと作曲を学び、フンパーディンクに師事し、メンゲルベルクと机を並べました。1890年に卒業後、ケルン市立管弦楽団のヴァイオリン奏者としてキャリアをスタートさせました。

シカゴ交響楽団との出会い

1895年、シカゴ交響楽団の楽員選考のためにドイツを訪れていたセオドア・トマスとの出会いが、ストックの運命を大きく変えました。オーディションに合格し、ヴィオラ奏者としてシカゴ交響楽団に入団。その後、トマスはストックの指揮者としての才能を見抜き、1899年に准指揮者に昇格させました。

音楽監督としての活躍

1905年、トマスの急逝を受け、ストックはシカゴ交響楽団の音楽監督に就任しました。当初は代役でしたが、マーラーやリヒターといった大物指揮者の招聘が失敗に終わったことで、1911年に終身音楽監督の座がストックに託されました。

ストックの指導の下、シカゴ交響楽団は目覚ましい発展を遂げ、アメリカ屈指のオーケストラへと成長しました。特に、特徴的な金管楽器の響きは、初期の録音からも確認できます。また、ストックは現代音楽の熱心な支持者であり、マーラー、リヒャルト・シュトラウスをはじめ、ストラヴィンスキー、プロコフィエフ、ホルスト、コダーイ、グリフス、ミャスコフスキーなど、当時モダンとされていた多くの作曲家の作品を積極的に紹介し、演奏・録音しました。シカゴ交響楽団創立50周年記念の委嘱作品であるストラヴィンスキーの《交響曲ハ調》や、コダーイの《管弦楽のための協奏曲》などがその例です。1916年には、シカゴ交響楽団を指揮してコロンビア・レーベルに初録音を行い、アメリカのオーケストラが独自の音楽監督のもとで行った最初の録音となりました。その後、RCAビクターやコロンビアで録音活動を続け、没後の1943年には、ショーソンの《交響曲変ロ長調》が発表されました。

評価

ストックは、指揮者としてはレオポルド・ストコフスキーやアルトゥール・ニキシュ、アルトゥーロ・トスカニーニのような華やかな存在ではありませんでしたが、音楽そのものに聴衆の注意を向けさせる、控えめな指揮者でした。しかし、その実力は高く、ワーグナー、ブラームス、チャイコフスキーなどの録音は、聴衆を感動させるほどの表現力を持っています。中庸を得た姿勢のため、ストックは過小評価されがちでしたが、その功績は決して小さくありません。CD時代になり、音源の入手が困難になりつつありますが、ビダルフやダンテといったレーベル、シカゴ交響楽団の公式サイトなどで入手できます。

晩年と遺産

ストックは、シカゴ交響楽団の音楽監督を37年間務めました。これは、ユージン・オーマンディのフィラデルフィア管弦楽団と並び、アメリカ人指揮者の最長記録です。ストックの死後、音楽監督の座はベルギー人のデジレ・デフォーが引き継ぎました。フレデリック・ストックは、その音楽に対する真摯な姿勢と、シカゴ交響楽団の発展に貢献した功績により、後世に語り継がれるべき偉大な音楽家の一人です。

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