フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』（原題: The Florida Project）は、2017年に公開されたアメリカのドラマ映画です。ショーン・ベイカーが監督を務め、ブルックリン・プリンスが主演を務めました。この映画は、2008年のサブプライム住宅ローン危機後のアメリカ社会で、貧困に苦しむ人々の生活を6歳の少女の目を通して描いています。物語の舞台となるのは、フロリダ州オーランドのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのすぐ近くにあるモーテル「マジック・キャッスル」です。

主人公のムーニーは、夏休みを母親のヘイリーと共にこのモーテルで過ごしています。ムーニーは、同じモーテルに住むスクーティや、隣のモーテルに住むディッキーを遊び友達とし、毎日を自由に過ごしています。ある日、彼らは新しい滞在者の車に唾を吐きかけ、それがきっかけでディッキーが父親に叱られ、しばらくの間遊べなくなってしまいます。しかし、ムーニーとスクーティは、車の持ち主の孫であるジャンシーと出会い、新たな友情を育みます。

物語が進むにつれて、子供たちの遊びは、大人たちを巻き込む騒動に発展していきます。例えば、モーテルの配電室に侵入して停電を引き起こしたり、廃屋で火遊びをして火事を起こしたりします。モーテルの管理人であるボビーは、子供たちのいたずらに手を焼きながらも、彼らの境遇を理解し、優しく見守っています。一方、ムーニーの母親ヘイリーは、定職に就かず、観光客相手に香水を売ったり、売春をして生計を立てています。生活は厳しく、食事は福祉団体の配給や、スクーティの母親が働くダイナーから横流しされるパンケーキに頼っています。

ある日、ムーニーたちが起こした火事がきっかけで、スクーティの母親アシュリーは、児童家庭局が介入することを恐れ、ムーニーたちと遊ぶことを禁じます。ヘイリーは、売春をしていることが発覚し、ボビーからも咎められます。追い詰められたヘイリーは、アシュリーに助けを求めますが、激高して彼女を殴ってしまいます。そして、児童家庭局がムーニーを一時的な里親のもとに送るため、モーテルにやってきます。ムーニーは逃げ出し、ジャンシーと共にディズニーワールドに駆け込みます。このラストシーンは、子供たちの純粋さと、大人の世界の厳しさとの対比を象徴的に描いています。

この映画では、ブルックリン・プリンスがムーニーを、ブリア・ヴィネイトがヘイリーを演じています。また、ウィレム・デフォーがモーテルの管理人ボビー役として出演しており、その演技は高く評価されています。制作においては、ショーン・ベイカー監督は、以前の作品『タンジェリン』でiPhoneで撮影したことで注目されましたが、本作では35mmフィルムを使用しました。ただし、ディズニーワールドでの最後のシーンはiPhoneで撮影されています。

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』は、カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、批評家から絶賛されました。Rotten Tomatoesでは94%の支持率を獲得し、「不当に扱われている人々に色彩豊かかつ共感的な視線を向けている」と評されています。Metacriticでも高い評価を得ており、現代アメリカの社会問題を、子供たちの目線を通して描き出した、非常に完成度の高い作品と言えるでしょう。

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