フロントサイドバス

フロントサイドバス（FSB）とは

フロントサイドバス（Front Side Bus, FSB）は、CPUバスの一種で、主にx86アーキテクチャのプロセッサで使用されていました。これは、CPUとシステム（ノースブリッジ）間のデータ伝送を担うバスであり、特にCPUが2次キャッシュメモリとシステム側の両方にバスを持っていた時代に、システム側のバスを指して名付けられました。

概要

Pentium Proで初めて、CPUバスがシステム側と2次キャッシュ側に分離される構造が登場しました。この構造はデュアルインディペンデントバス（Dual Independent Bus, DIB）と呼ばれ、2次キャッシュへのアクセスとメインメモリへのアクセスを異なるバスで処理することで、性能向上を図りました。以前のPentiumプロセッサでは、2次キャッシュもCPUバスを共有していたため、この変更は大きな進歩でした。

フロントサイドバスという名称は、Pentium IIで初めて使用されました。同時に、2次キャッシュ側のバスはバックサイドバス（Back Side Bus, BSB）と呼ばれるようになりました。これは、システム側をCPUの「正面」と見なし、2次キャッシュがCPUの「背面」に位置すると考えたことに由来します。バックサイドバスの導入により、CPUバスは2次キャッシュのアクセスから解放され、その結果、従来からのCPUバスと区別するためにフロントサイドバスと命名されたのです。

初期のCeleronプロセッサは2次キャッシュを持たないため、バックサイドバスも存在せず、そのCPUバスはフロントサイドバスとは呼ばれませんでした。フロントサイドバスを持つCPUは、Pentium Pro以降（初期のCeleronを除く）のプロセッサで採用されました。この名称は広く普及し、AMDやVIA Technologiesも同様のバス構造を持つ自社製品のバスをフロントサイドバスと呼んでいました。

ただし、一部ではCPUバス全体を指してフロントサイドバスと呼ぶ誤用や、ベースクロック周波数を指して「FSB」と呼ぶケースも見られました。当初、フロントサイドバス周波数はデータ転送クロック周波数と同一でしたが、Pentium 4以降のQuad Pumped技術の導入により、実際のバス周波数の4倍の周波数がフロントサイドバス周波数として表記されるようになり、両者は同じではなくなりました。

フロントサイドバスの終焉

Nehalemマイクロアーキテクチャが登場すると、バスの代わりにQPI（QuickPath Interconnect）という接続規格が採用され、CPUと他の要素間が排他的に直接接続されるようになりました。これにより、フロントサイドバスはx86アーキテクチャを持つCPUから姿を消しました。AMDは2003年にOpteronやAthlon 64でメモリコントローラをCPUに内蔵し、その際にFSBの呼称を廃止しました。

関連項目

インテル QuickPath インターコネクト (QPI) - フロントサイドバスの後継となるバス規格
HyperTransport

フロントサイドバスは、かつてCPUとシステム間のデータ伝送において重要な役割を果たしていましたが、技術の進化とともにその役割を終えました。しかし、その概念はCPUの発展史において重要な一章をなしています。

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