フン族の戦い

フン族の戦い (Hunnenschlacht) について

フランツ・リストの交響詩第11番『フン族の戦い』 S.105 は、彼の13曲の交響詩の中でも特に親しみやすい作品の一つです。交響詩第3番『前奏曲』と並んで、リストの管弦楽作品の中でもよく知られています。

作曲の背景

1855年の夏、リストはヴィトゲンシュタイン伯爵夫人から画家ヴィルヘルム・フォン・カウルバッハの壁画「フン族の戦い」の複製画を贈られました。この絵画に深く感銘を受けたリストは、この壮大な場面を音楽で表現したいと考え、交響詩の作曲を決意しました。1857年2月10日に完成するまでに、リストはカウルバッハ本人と交流し、ベルリンの美術館で原画を鑑賞する機会にも恵まれました。

当初、リストはカウルバッハの壁画連作全体を音楽化しようと計画しましたが、実現したのは『フン族の戦い』一曲のみでした。

初演

初演は、1857年12月29日にリスト自身の指揮によって、ヴァイマルの宮廷劇場で行われました。

楽器編成

この交響詩は、以下の楽器編成で演奏されます。

ピッコロ
フルート 2
オーボエ 2
クラリネット 2
ファゴット 2
ホルン 4
トランペット 3
トロンボーン 3
チューバ
ティンパニ
シンバル
オルガン
弦五部

演奏時間

演奏時間は約14分です。また、この作品には2台のピアノ編曲版も存在します。

楽曲構成と描写

この作品は、451年6月20日に現在の北フランスで起こった「カタラウヌムの戦い」を音楽で描いています。この戦いは、アッティラ率いるフン族の軍勢と、西ローマ帝国の将軍アエティウス、西ゴート王テオドリック1世らが率いる西ヨーロッパ諸民族の連合軍の間で繰り広げられました。

音楽は、フン族を異教徒、西ヨーロッパ諸民族をキリスト教徒として対比させながら、戦いの様子をドラマティックに描写しています。

前半は、異教徒であるフン族の猛威が描かれます。しかし、音楽が進行するにつれて、次第にコラールの旋律が力を増していきます。このコラールは、古いコラール『クルス・フィデリス (Crux fidelis)』に基づいています。

結尾部分では、コラールの旋律が高らかに歌い上げられ、キリスト教徒の勝利を象徴しています。

参考文献

この作品をより深く理解するためには、以下の資料が役立ちます。

『リスト・バルトーク：作品集』（エルネスト・アンセルメ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団、デッカ）の解説書
『名曲事典』（属啓成、音楽之友社）
最新名曲解説全集 補巻第1巻（平野昭 執筆 音楽之友社）ISBN 4276010314

外部リンク

* Hunnenschlachtの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

この交響詩は、リストの音楽的才能と、歴史的な出来事を音楽で表現する創造性を示す優れた例です。ぜひ、そのドラマティックな音楽を鑑賞してみてください。

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