フーシン部

フーシン（Hu'ušin）とは

フーシン（モンゴル語: Hu'ušin）は、モンゴル部を構成する遊牧集団の名称です。『元朝秘史』では許兀慎、『集史』ではهوشین（hūshīn）と記されています。

概要

フーシン部は、アラン・ゴアと光の精の末裔であるニルンに属さない、ドルルギン諸氏族の一つです。フーシン部の起源に関する記録はほとんど残されていません。これは、フーシン部が元来、ウリヤンハン、スルドス、バヤウトなどと同様に、ブルカン・カルドゥンに移住してきたボルジギン氏に征服された先住民であったためと考えられています。フーシンはモンゴル部の中でも比較的小規模な氏族であり、後述するボロクルはキヤト・ジュルキン氏の隷属民出身でした。

フーシン部にとって大きな転機となったのは、ボロクル・ノヤンの登場です。幼い頃にチンギス・カンに見出されたボロクルは、「四駿（Dörben külü'üd）」と称されるモンゴル帝国最高幹部にまで出世しました。ボロクルは「右手の万人隊長」ボオルチュの副官として、チンギス・カン直属の右翼軍の統轄を任せられ、以後、ボロクルの後裔は右翼軍の統轄とケシクテイ（親衛隊）長の地位を代々世襲するようになりました。また、ボロクルの他にもフーシダイ（ケテ）というフーシン部出身の人物がジョチ・ウルスに仕えていたという記録も残っています。

このように、フーシン部は当初弱小な氏族でしたが、ボロクルのような傑出した人物の出現により、モンゴル帝国の政治・軍事において重要な役割を果たすようになりました。彼らの活動は、モンゴル帝国の拡大と維持に大きく貢献したと言えるでしょう。

参考文献

志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
村上正二訳注『モンゴル秘史 1巻』平凡社、1970年
村上正二訳注『モンゴル秘史 2巻』平凡社、1972年
村上正二訳注『モンゴル秘史 3巻』平凡社、1976年
* 村上正二『モンゴル帝国史研究』風間書房、1993年

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