フーズ・ラスト

『フーズ・ラスト』（Who's Last）は、ザ・フーが1984年にリリースしたライブ・アルバムです。このアルバムは、1982年9月から12月にかけて行われた北米フェアウェル・ツアーから、アメリカ合衆国でのコンサートの模様を収録しています。

背景

ザ・フーは1982年9月に10作目のアルバム『イッツ・ハード』を発表し、その直後の9月にはイギリス国内での最後のコンサートをバーミンガムで開催しました。その後、アメリカとカナダでのフェアウェル・ツアーを開始。このツアーには、オリジナル・メンバー4人に加え、『イッツ・ハード』のレコーディングに参加したアメリカ人キーボーディスト、ティム・ゴーマンが参加しました。

フェアウェル・ツアーは12月16日と17日にトロントのメープル・リーフ・ガーデンズで行われたコンサートで幕を閉じ、ザ・フーは1983年に正式に解散しました。

内容

本作に収録された17曲のうち、13曲は12月14日にオハイオ州クリーブランドのリッチフィールド・コロシアムで行われたアメリカでの最後のコンサートからの音源です。このフェアウェル・ツアーでは、ケニー・ジョーンズがドラムスとして加入後に制作されたアルバム『フェイス・ダンシズ』（1981年）と『イッツ・ハード』の収録曲も演奏されましたが、本作に収録されたのは、すべて前任のドラマー、キース・ムーンが在籍していた時代の楽曲です。

「ドクター・ジミー」は、アルバム『四重人格』（1973年）からの楽曲で、キース・ムーン在籍時のコンサートでは、シンセサイザーや金管楽器の演奏を録音したテープに合わせてメンバーが演奏していました。しかし、このフェアウェル・ツアーでは初めてテープを使用せずに、メンバーのみで演奏されました。

「不死身のハードロック」に続く「リプリーズ」は、「不死身のハードロック」の最終節をロカビリー風にアレンジしたものです。

制作

本作のプロデュースを担当したデイヴ・サイ・ラングストンは、1965年4月にローディーとしてザ・フーに参加して以来、長年にわたって彼らの活動を支えてきた人物です。

このアルバムは、ザ・フーの歴史における重要な時期を捉えた貴重な記録であり、彼らのライブ・パフォーマンスの魅力を存分に伝えています。特にキース・ムーン在籍時の楽曲に焦点を当てていることで、往年のファンにとっては感慨深い作品となっています。

フェアウェル・ツアーという特別な状況下で演奏されたこれらの楽曲は、ザ・フーのメンバーの熱い思いが込められており、聴く者に深い感動を与えます。彼らの音楽に対する情熱と、観客との一体感が伝わる、まさにライブ・アルバムの醍醐味を味わえる作品と言えるでしょう。

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