ブブゼラ

ブブゼラ：南アフリカを象徴する楽器とその騒音問題

ブブゼラは、南アフリカ共和国で生まれた金管楽器です。ツワナ語では「レパタタ」とも呼ばれ、約1メートルの長さを持つ筒状の楽器で、スタジアムホーンの一種として知られています。合成樹脂製が一般的で、バルブやトーンホールなどの音程調整機構を持たないシンプルな構造が特徴です。唇を振動させて吹き鳴らすと、霧笛や象の鳴き声のような、単調ながらも非常に大きな音が発せられます。

ブブゼラの起源と普及

ブブゼラの起源については諸説ありますが、1910年頃にナザレ・バプティスト教会の創始者、イザイア・シェンベ師がレイヨウの角を用いて開発したという説が有力です。当初はサッカーの応援ではなく、教会の信徒が祈りの際に使用していました。その後、1980年代にダーバンのサッカークラブ、アマズールFCのサポーターがスタジアムで吹き始めたことがきっかけとなり、ヨハネスブルク周辺に広まりました。

1990年代にはプラスチック製が主流となり、一気に普及しました。最も古いものは1965年頃に登場したとされていますが、それ以前の記録は残っていません。また、ブブゼラの名称の由来も諸説あり、ズールー語で「ブブという音を出す」という意味を持つとする説や、非白人居住地域の隠語であるとする説などがあります。

フレディ・“サダム”・マァケという人物は、自身が発明者だと主張しています。彼は1960年代に自転車用ホーンを改造し、ブブゼラを作り出したと言います。アルミニウム製だった初期のブブゼラは危険性から禁止されたため、彼はプラスチック製の製造企業を探し、2001年には南アフリカの企業が大量生産を開始。その後、中国企業も参入し、現在では中国で生産されたものが市場の9割を占めていると推測されています。

2010年ワールドカップと騒音問題

2010年FIFAワールドカップでは、ブブゼラが世界的な注目を集めました。スタジアムを埋め尽くすブブゼラの音は大会の象徴的な光景となり、同時に大きな騒音問題を引き起こしました。そのけたたましい音は、85デシベル以上の長時間の騒音にさらされると難聴を引き起こす可能性があるという指摘もあり、実際、聴力の低下を訴える人もいました。

ブブゼラの音は会話の妨げにもなり、テレビ中継では音響効果でブブゼラの周波数をカットする試みも行われました。FIFAはブブゼラの使用を禁止しませんでしたが、国歌斉唱時などには使用が自粛される場面も見られました。

国際大会での禁止とその他の問題点

ブブゼラの騒音問題を受け、多くの国際的なスポーツイベントやコンサートなどで使用が禁止されました。禁止された主なイベントには、ウィンブルドン選手権、UEFA主催試合、ラグビーワールドカップ2011、ロンドンオリンピックなどがあります。また、ブブゼラは咳や歓声よりも病原菌を大規模に拡散させる可能性も指摘されており、健康面での懸念も抱えられています。

まとめ

ブブゼラは南アフリカの文化を象徴する楽器ですが、その騒音問題は世界的な議論を巻き起こしました。2010年ワールドカップでのブブゼラの鳴り響く光景は、その文化的な側面と、同時に克服すべき課題を浮き彫りにしたと言えるでしょう。ブブゼラの歴史と騒音問題を通して、文化と社会のバランス、そして技術革新と社会問題の関係性を考えるきっかけを与えてくれます。今後、ブブゼラがどのように扱われていくのか、注目が集まります。

もう一度検索