ブラウン・アイド・ガール

ブラウン・アイド・ガール：時代を超えて愛される名曲

「ブラウン・アイド・ガール」（Brown Eyed Girl）は、北アイルランド出身のシンガーソングライター、ヴァン・モリソンが1967年に発表した楽曲です。この曲は、彼のソロ活動の幕開けを飾るシングルとしてリリースされ、全米Billboard Hot 100で最高10位を記録しました。現在ではクラシック・ロックの定番として、ラジオで頻繁に放送され、数多くのアーティストによってカバーされています。

制作の背景

ヴァン・モリソンは、1966年にバンド「ゼム」を脱退後、プロデューサーのバート・バーンズに誘われ、ソロ活動を開始しました。1967年3月、ニューヨークのA&Rスタジオでレコーディングが行われ、この時「ブラウン・アイド・ガール」を含む8曲が録音されました。レコーディングには、ギタリストのエリック・ゲイル、ヒュー・マクラッケン、アル・ゴルゴーニ、ベーシストのラス・サヴァカス、ピアニストのポール・グリフィン、ドラマーのゲイリー・チェスターらが参加し、コーラスにはスイート・インスピレーションズが加わりました。

当初、曲のタイトルは「Brown-Skinned Girl（茶色い肌の女の子）」でしたが、レコーディング中にモリソン自身が現在のタイトルに変更しました。この変更について、モリソンは単なるミスだったと語っています。しかし、人種間の交流を描いた原題を、ラジオでの放送に適するように変更したという説もあります。

歌詞は、過去の恋人へのノスタルジーを歌ったものですが、当時、歌詞の一部が過激とみなされ、ラジオ放送では「making love in the green grass」の部分が「laughin' and a-runnin', hey hey」に置き換えられました。このラジオエディット版は、ベストアルバムにも収録されています。

バング・レコードとの契約により、モリソンはロイヤリティを受け取るまでレコーディング費用を負担することになり、結果として、この曲のヒットにも関わらず、彼はロイヤリティをほとんど受け取っていないと主張しています。この契約への不満は、後に発表された楽曲『The Big Royalty Check』にも表れています。モリソン自身はこの曲を気に入っておらず、「最高の曲とは思わない」と語っていますが、背景には契約上のトラブルがあったと推測されています。

評価と影響

「ブラウン・アイド・ガール」は、発表から数十年経った今も、オールディーズやクラシック・ロックのラジオ局で頻繁に放送され続けています。2005年には700万回以上、2011年には1000万回以上ラジオで放送されたとして、BMI（Broadcast Music, Inc.）から表彰を受けています。ビルボード誌は2015年に、この曲を1960年代で最もダウンロードされ、最も再生された曲と評価しました。

音楽評論家からも高い評価を受けており、デイヴ・マーシュは著書『The Heart of Rock and Soul, The 1001 Greatest Singles Ever』で386位に選出しています。また、BMIは「Top 100 Songs of the Century」に、MTVとローリング・ストーン誌は「トップ100ポップソング」の21位に、VH1は「グレイテスト・ロック・ソング」の49位に選出しています。ローリング・ストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500」では110位にランクインしています。さらに、グラミーの殿堂入りも果たしており、「ロックン・ロールを形作った曲」の一つとしても認められています。

映画やメディアでの使用

「ブラウン・アイド・ガール」は、映画『再会の時』、『7月4日に生まれて』、『愛がこわれるとき』など、数々の作品で使用されています。また、BBCラジオ4の番組『デザート・アイランド・ディスクス』では、ボリス・ジョンソン、ベティ・ジャクソン、ヒュー・ローリーなど、多くの著名人が「無人島に持っていきたい曲」としてこの曲を選んでいます。

2005年には、当時のブッシュ大統領がこの曲を愛聴していることが話題になり、2009年には、ビル・クリントン元大統領がサイン入りのiPodを出品した際に、お気に入りの曲の一つとしてこの曲が含まれていました。

カバーバージョン

「ブラウン・アイド・ガール」は、イアン・マシューズ、ジミー・バフェット、アデル、ビリー・レイ・サイラス、ブルース・スプリングスティーンなど、数多くのアーティストによってカバーされています。ジョー・スタンプリーのカバーバージョンは、1983年にビルボードのカントリーソングチャートで29位を獲得しました。

「ブラウン・アイド・ガール」は、ヴァン・モリソンの音楽キャリアを代表する一曲であると同時に、時代を超えて愛される普遍的な名曲として、今後も多くの人々に聴き継がれていくでしょう。

もう一度検索