ブラシノステロイド

ブラシノステロイドの概要

ブラシノステロイド（brassinosteroid、略称BR）は、植物ホルモンの一形態であり、植物の成長や発芽、またストレスへの対応に重要な役割を果たします。これらは、ステロイドの基本骨格を持つ化合物で、植物全体の成長促進や種子の発芽、さらにはストレス耐性の向上に寄与します。主に他の植物ホルモンと連携して働くため、その作用はしばしば複雑です。1979年には、ブラシノライドが初めて単離され、その後も70種以上の類縁体が特定されています。1997年には、ブラシノステロイドを認識する受容体BRI1が発見され、これが機能の理解を進める一因となりました。

発見の歴史

ブラシノステロイドの研究は1960年代から始まりました。1970年、ミッチェルらがセイヨウアブラナの花粉の抽出物がインゲンマメ幼体を成長させることを発見。1968年には、丸茂らがイスノキにおける葉の屈曲活性を発見し、その成分を分離しました。1979年になって、ブラシノライドがセイヨウアブラナから単離され、1982年にはクリの虫こぶからカスタステロンが見つかりました。特に1996年以降は、生合成経路や関連遺伝子も研究が進展しました。

植物体内での合成と分布

ブラシノステロイドは、植物のステロールから合成されます。具体的には、メバロン酸からスタートし、スクワレンやシクロアルテノールを経て合成され、最終的にブラシノライドへと至ります。このプロセスは特定の反応経路によるものであり、ブラシノステロイドは多くの植物で確認されていますが、興味深いことに糸状菌や細菌では発見されていません。その合成位置については完全には解明されていないものの、全ての組織が関与している可能性があると考えられています。また、植物のさまざまな部分に分布しており、特に花粉や種子に多く見られます。

生理作用

ブラシノステロイドは、植物にとって重要な生理的効果を持ちます。特にブラシノライドが最も強い活性を示し、伸長成長の促進や細胞分裂の促進、発芽率の向上、ストレス耐性の付与などに寄与します。これらの作用は、良好な環境下では曖昧に感じられる一方、不良環境下や成長中の若い組織でより顕著に現れます。以下にその具体的な効果を示します。

1. 伸長成長の促進

• - 茎：単子葉植物では胚軸や子葉鞘を、双子葉植物では胚軸や花柄を伸長させる。
• - 葉：葉の成長も促進され、特にイネでは葉の屈曲と新葉の展開が見られる。
• - 根：低濃度で根の成長を促すが、高濃度では阻害することもある。

2. 細胞分裂の促進

ブラシノステロイドは細胞の伸長と並行して細胞分裂も促進します。オーキシンやサイトカイニンと結びつくことで、この作用がさらに強化されます。

3. 発芽の促進

種子の発芽率を上げる効果があり、アブシジン酸による発芽阻害を打破する作用が見られます。

4. ストレス耐性の付与

病害や環境ストレスに対する耐性を高めることが確認されており、これはエチレンやジャスモン酸との関連が考えられています。

結論

ブラシノステロイドは植物の成長とストレス耐性を調整する重要なホルモンであり、今後もそのメカニズムについての研究が進むことで、植物育成や農業における応用が期待されます。この植物ホルモンが持つ多様な影響は、より良い植物生産の方法を見出す手助けとなるでしょう。

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