ブラダマンテ

ブラダマンテ（BradamanteまたはBradamant）は、16世紀初頭にイタリアで書かれた二大叙事詩、マッテーオ・マリーア・ボイアルドの『恋するオルランド』とルドヴィーコ・アリオストの『狂えるオルランド』において重要な役割を果たす架空の人物です。彼女は勇猛果敢なキリスト教徒の女騎士であり、高名な騎士リナルドの妹にあたります。彼女の物語の中心は、敵対する立場のサラセン人戦士、ルッジェーロとの間に芽生える禁断の愛です。

物語における活躍

ブラダマンテは単なる恋する乙女ではなく、優れた武術の使い手として描かれています。彼女は触れた相手を必ず馬から落とすという不思議な力を持つ魔法の槍を携え、幾多の戦場で活躍します。特に、魔法使いアトランテによって捕らえられ危機に瀕した恋人ルッジェーロを、その武勇と魔法の槍を駆使して救い出す場面は印象的です。

ルッジェーロとの関係は波乱に満ちており、二人は物語の中で幾度となく離れ離れになります。さらに、二人の結婚には大きな障害が立ちはだかります。ブラダマンテはルッジェーロを深く愛していましたが、彼がイスラム教徒である限りは結婚しないという強い意志を持っていました。ルッジェーロが後にキリスト教に改宗した後も、ブラダマンテの両親は二人の結婚を認めず、レオという名の別の貴族との結婚を強く勧めます。

自らの意志を貫くため、ブラダマンテは一つの条件を提示します。それは、武術の試合で自分に勝利した相手と結婚するというものでした。この難題に対し、ルッジェーロは見事に打ち勝ち、ブラダマンテとの結婚を果たすことができました。この二人の結びつきは、ボイアルドとアリオストが後援を受けていたイタリアの名家、エステ家の祖先であるという設定によって、物語に歴史的な深みを与えています。

これらの叙事詩は、中世ヨーロッパの騎士道物語である「シャルルマーニュ伝説」を基盤としつつ、フランスやブルターニュ地方の伝承に登場する様々な題材や要素が巧みに織り交ぜられ、複雑で豊かな物語世界を構築しています。

後世への影響

ブラダマンテの魅力的な人物像と、ルッジェーロとの壮大なロマンスは、後世の芸術家たちにも大きなインスピレーションを与えました。彼女を題材とした作品は数多く存在します。

例えば、1582年にはフランスの劇作家ロベール・ガルニエが、二人の恋愛をさらに掘り下げた悲劇『ブラダマンテ』を発表しています。

また、彼女はオペラの世界でも繰り返し取り上げられました。

ピエトロ・フランチェスコ・カヴァッリ作曲のオペラ『ラ・ブラダマンテ』（1650年初演）
ルイ・ラコスト作曲のオペラ『ブラダマンテ』（1707年初演）
ヨハン・フリードリヒ・ライヒャルト作曲のオペラ『ブラダマンテ』（1809年初演）
エドゥアルト・タウヴィツ作曲のオペラ『ブラダマンテ』（1844年初演）

さらに、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの著名なオペラ『アルチーナ』にも、主要な登場人物としてブラダマンテが描かれています。

小説の分野では、イタリアの作家イタロ・カルヴィーノが1959年に発表した、独特なユーモアとシュルレアリスムに満ちた作品『不在の騎士』において、主要なキャラクターの一人としてブラダマンテが登場します。

映画では、シャルルマーニュ伝説を題材にした1983年のイタリア映画『ハーツ・アンド・アーマー』（原題：I Paladini: Storia d'armi e d'amori）で、女優バルバラ・デ・ロッシによってブラダマンテが演じられています。

ブラダマンテは、勇気と愛、そして運命に立ち向かう強さを兼ね備えたヒロインとして、時代を超えて様々な形で語り継がれ、多くの人々を魅了し続けています。

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