ブラックウォール・フリゲート

ブラックウォール・フリゲートは、1830年代後半から1870年代中頃にかけて建造された、3本マストの全装帆船です。この船は、イギリス東インド会社のインディアマンに代わる存在として設計され、イギリス本国とインド、中国を結ぶ貿易航路で活躍しました。1850年代からは、イギリスとオーストラリア、ニュージーランド間の航路が主な舞台となりました。

最初のブラックウォール・フリゲートは、テムズ川沿いのブラックウォール・ヤードでウィグラムとグリーンによって建造されました。この造船所は17世紀初頭から東インド会社向けのインディアマンを建造しており、英国海軍向けの軍艦も手がけていました。ブラックウォール・フリゲートは、伝統的なインディアマンとは異なり、一層の船尾楼を持つことで海軍のフリゲート艦に似た外観となりました。この船尾楼の形状は、船の線形を改善し、高速性能に貢献しました。初期のブラックウォール・フリゲートは、船首が丸みを帯びている点も特徴で、「りんごのような頬」と表現されることもありました。

1837年に建造されたSeringapatamとMadagascarが、最初のブラックウォール・フリゲートとされています。これらの名前は、英国海軍のインドで建造されたフリゲートから受け継がれたものです。ブラックウォール・ヤードでは商船だけでなく軍艦も建造しており、その過程で軍艦の技術的な影響を受け、外観にもそれが反映されました。これが、ブラックウォール・フリゲートという名称の由来にもなっています。

1875年には、ブラックウォール・ヤードで建造された鉄製船Melbourneが最後のブラックウォール・フリゲートとなりました。それまでに、イギリスやインドの造船所で120隻を超えるフリゲートが建造されました。これらの高速帆船は、安全性と快適性に優れており、高級品の貿易に用いられました。しかし、その一方で、いくつかの船は19世紀の有名な難破事件でその名を残しました。

主な難破事件

Madagascar: 1853年、メルボルンとロンドンの間で乗組員150名とともに消息不明。
Dalhousie: 1853年、ビーチー・ヘッドで沈没、乗客乗員60名が死亡。
Dunbar: 1857年、シドニー・ヘッド付近で沈没、121名が死亡。
Northfleet: 1873年、イギリス海峡で蒸気船に衝突し沈没、320名が死亡。
Cospatrick: 1874年、喜望峰沖で火災により焼失、473名が死亡。

後期に建造されたブラックウォール・フリゲートとしては、1861年に建造されたParramattaとTrue Britonが有名です。True Britonは、オーストラリアやニュージーランドへの乗客、貨物、囚人輸送を頻繁に行っていました。この船の写真は、ビクトリア州立図書館に展示されています。

ブラックウォール・フリゲートとクリッパーの主な違いは、1860年代まで船尾楼の有無にありました。クリッパーには船尾楼がないのが特徴でしたが、多くのセミクリッパーは船尾楼を備えていました。また、船体の形状も異なり、ブラックウォール・フリゲートはクリッパーよりもダンブル・ホーム型、つまり喫水線より乾舷が狭くなっている形状が顕著でした。

1870年代には、乗客輸送においてブラックウォール・フリゲートもクリッパーも蒸気船に取って代わられました。その後、帆船は貨物専用のウィンドジャマーへと進化しました。

参考文献

Lubbock, Basil (1922). The Blackwall Frigates. Glasgow: Brown, Son & Ferguson.
Lloyd's Register of Shipping
Lyon, David (1993). The Navy Sailing List - All the Ships of the Royal Navy built, Purchased and Captured - 1688-1860. London: Conway Maritime Press.

外部リンク

英国国立海洋博物館目録
絵画「The Indiaman Seringapatam arriving home」
版画「The Seringapatam East Indiaman, 1000 Tons」
船体模型「The Seringapatam」
絵画「The Blackwall frigate Owen Glendower at anchor off a coastline」
版画「The Owen Glendower, East Indiaman, 1000 Tons (Entering Bombay Harbour)」
* 船体模型「The Owen Glendower」

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