ブラック・アンド・ブルー (ローリング・ストーンズのアルバム)

ブラック・アンド・ブルー：ローリング・ストーンズの転換期を彩る傑作

1976年発表のローリング・ストーンズのアルバム『ブラック・アンド・ブルー』(Black and Blue)は、バンドの重要な転換期を象徴する作品として知られています。前作『イッツ・オンリー・ロックンロール』からサウンドの方向性を大きく転換、バンドにとって新たな出発点ともいえる一枚です。

ミック・テイラー脱退とロン・ウッド加入

このアルバムは、リードギタリストのミック・テイラー脱退後、ロン・ウッドが初めて参加した作品として大きな意味を持ちます。テイラー脱退という衝撃的な出来事の後、ストーンズは新たなギタリスト探しに奔走し、多くの著名ギタリストが参加するオーディションが行われました。この様子はメディアによって「グレイト・ギタリスト・ハント」と称され、大きな話題となりました。最終的に、ロン・ウッドがストーンズに加入することになり、本作ではその才能が一部垣間見れることになります。ウッドは正式メンバーになる前に北米ツアーに参加しており、このアルバムでの参加楽曲は全8曲中5曲と、貢献度は高くなっています。

ブラックミュージックへの回帰と洗練されたサウンド

音楽的には、ストーンズのルーツであるブラックミュージックへの回帰が顕著です。しかし、従来のアメリカ南部サウンドとは異なり、洗練されたニューソウルやAORの影響が強く感じられます。ファンク色の強い「ホット・スタッフ」や「ヘイ・ネグリータ」、レゲエ・カヴァーの「チェリー・オー・ベイビー」、そしてジャズの影響も色濃い「メロディー」など、多様な楽曲が収録されています。ビリー・プレストンがアルバム全体に渡って大きく貢献しており、そのキーボードプレイはストーンズのサウンドに深みを与えています。

レコーディングとリリース

本作のレコーディングは、西ドイツ、ミュンヘン、オランダ、ロッテルダム、スイス、モントルー、そしてニューヨークと、複数のスタジオを跨いで行われました。様々な場所でレコーディングされたトラックを繋ぎ合わせ、最終的なアルバムが完成するまでには幾多の苦労があったようです。1976年にリリースされると、全英2位、全米1位を記録。リリースからすぐにプラチナディスクを獲得するなど、商業的にも大きな成功を収めました。「愚か者の涙」はシングルカットされ、全英6位、全米10位と、こちらもヒットを記録しました。その後、数回にわたるリマスターを経て、現在でも多くのリスナーに楽しまれています。

パッケージとクレジット

アルバムのパッケージは、タイトルどおり黒と青を基調としたダブルジャケット仕様。カバー写真の撮影は日本人フォトグラファーのヒロ（若林康宏）が担当しました。レコードの内袋には各曲のクレジットが記載されている一方、レコード・ラベルの作者クレジットが"Jagger/Richards"ではなく"Richards/Jagger"と逆になっているという、興味深い点も見られます。

収録曲

アルバムには、ジャガー/リチャーズの作品に加え、ロン・ウッドやビリー・プレストンからインスピレーションを得た楽曲も含まれています。楽曲はストーンズの音楽性を多角的に示すものであり、それぞれの楽曲に個性があり、アルバム全体を通して飽きさせない内容となっています。代表曲である「愚か者の涙」以外にも、多くの楽曲がライブで演奏され、ストーンズの定番曲として現在も演奏されています。

ヨーロッパツアーとバンドの危機

アルバムリリース後の「Tour of Europe '76」では、「ホット・スタッフ」、「ハンド・オブ・フェイト」、「ヘイ・ネグリータ」、「愚か者の涙」などが演奏され、大きな成功を収めました。しかし、このツアーの後、キース・リチャーズがヘロイン密輸容疑で逮捕されるという事態に発展。カナダでのヘロイン密輸は重罪であり、ストーンズの活動継続が危ぶまれるほどの深刻な状況に陥りました。この出来事は、バンドの歴史の中でも最も解散の危機が迫った時期だったと言われています。

まとめ

『ブラック・アンド・ブルー』は、メンバーチェンジという大きな変化を乗り越え、新たなサウンドを探求したローリング・ストーンズの集大成と言えるアルバムです。ブラックミュージックへの回帰と洗練されたサウンド、そして多様な楽曲群は、リスナーを魅了し続けています。このアルバムは、ストーンズの音楽史における重要な作品であり、彼らの多様な音楽性を理解する上で欠かせない一枚です。

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