ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ

『ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ』は、イギリスの音楽家デヴィッド・ボウイが1993年に発表した、通算17作目にあたるスタジオ・アルバムです。この作品は、アリスタ・レコードより同年4月5日にリリースされました。1990年代に入り、過去の楽曲の演奏を「凍結」すると宣言し、ハードロックバンド、ティン・マシーンでの活動を経て、ソロ・アーティストとして再び動き出したボウイにとって、新たなキャリアの出発点を示す重要な位置づけとなっています。

ティン・マシーンでの活動は、音楽的にも商業的にも必ずしも期待されたような成果を上げるには至らず解散。その後にリリースされた本作は、ボウイが満を持して自身の名義での創作活動に回帰したことを告げるものでした。

アルバム制作にあたり、ボウイはかつて彼のキャリアにおいて大きな成功を収めた1983年のアルバム『レッツ・ダンス』を共に作り上げたナイル・ロジャースを再びプロデューサーとして起用しました。ロジャースの卓越したプロデュース能力は、本作の洗練されたサウンドに貢献しています。また、本作には、ボウイのグラムロック期を支え、『ジギー・スターダスト』や『アラジン・セイン』といった名盤を共に生み出した盟友であるギタリスト、ミック・ロンソンがゲスト参加しており、ファンの間で大きな感動を呼びました。ロンソンは、アイルランドの歌手モリッシーの楽曲「アイ・ノウ・イッツ・ゴナ・ハプン・サムデイ」のカバーバージョンでギターを演奏しています。ちなみに、このモリッシーのオリジナル曲は、ロンソン自身がプロデュースした1992年のアルバム『ユア・アーセナル』に収録されています。しかし、悲劇的なことに、アルバムのリリースからわずか数週間後の1993年4月29日、ミック・ロンソンは癌との闘いの末に他界しました。本作は、結果として彼が生前に参加した最後の主要なレコーディングの一つとなったのです。

音楽的な側面だけでなく、アルバム制作当時のボウイの個人的な状況も本作に影響を与えています。1992年、彼はスーパーモデルのイマン・アブドゥルマジドと結婚しました。この人生における大きな変化は、アルバムにも反映されており、結婚にまつわるテーマを扱った楽曲も複数収録されています。これは、それまでの内省的あるいは時に難解とも評された時期を経て、彼の内面に新たな光が差したことを示唆しているとも言えるでしょう。

ティン・マシーン時代には商業的な成功から遠ざかっていましたが、本作『ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ』は、デヴィッド・ボウイが依然としてメインストリームにおいて大きな影響力を持つ存在であることを証明しました。特にイギリスでは、アルバムは全英アルバムチャートで首位を獲得。これは、1984年のアルバム『トゥナイト』以来の快挙であり、彼の人気が根強いものであることを強く印象づけました。

本作は様々な形態でリリースされています。日本盤のCDには、ボーナストラックとして「パラス・アテナ －ドント・ストップ・プレイング・リミックス－」が追加収録されました。また、リリースから10年後の2003年には、EMIから再発売が行われ、その際にはオリジナルのアルバムに加え、12曲ものボーナストラックを収録したCDと、貴重な未発表映像を収めたDVDがセットになった3枚組としてリリースされ、ファン垂涎のアイテムとなりました。

アルバムの制作には、ナイル・ロジャース、ミック・ロンソンの他にも、プギ・ベルやスターリング・キャンベル（ドラムス）、バリー・キャンベルやジョン・リーガン（ベース）、リーブス・ガブレルスやワイルド・T・スプリンガー（ギター）、マイク・ガースン（ピアノ）といった名だたるミュージシャンや、AL B.シュア!をはじめとする多くのバッキング・ボーカリストたちが参加し、豪華かつ多彩なサウンドを作り上げています。

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