ブラバム・BT3

ブラバムBT3：F1黎明期の傑作

ブラバムBT3は、1962年にモーターレーシング・ディベロップメントによって製作された、ブラバム・レーシング・オーガニゼーション最初のフォーミュラ1マシンです。このマシンは、後に2度のワールドチャンピオンとなるジャック・ブラバムが、自身の名を冠したマシンで初めて世界選手権ポイントを獲得した、記念すべき1台となりました。保守的ながらも機能性と安全性を両立させた設計思想は、後のブラバム車の基本理念となります。

設計と特徴

BT3の設計は、それ以前のフォーミュラ・ジュニア用車両をベースに、ロン・トーラナックによって行われました。当時、チーム・ロータスがモノコックシャシーを採用したロータス25を導入していましたが、BT3は強度と修理の容易さを重視し、鋼管スペースフレームシャシーを採用しました。これは、モーターレーシング・ディベロップメントが顧客向けに販売していた車両構造にも近く、実用性を優先した設計と言えるでしょう。

コックピットは比較的広々としており、オイルと冷却水用パイプは車体外部に配置することで、ドライバーにとって快適な環境が実現されました。シャシーはファイバーグラス製カウルで覆われ、明るいターコイズブルーに金色のストライプが配された、スタイリッシュな外観も特徴です。

搭載エンジンは、コヴェントリー・クライマックス製の1,494cc V8エンジン。約157bhp(1962年仕様)から約190bhp(1963年仕様)へとパワーアップを果たしました。トランスミッションにはアルフ・フランシス設計のコロッティ製6速ギアボックスが採用されましたが、これは幾分脆弱な点でもありました。サスペンションは4輪独立懸架式ダブルウィッシュボーンを採用。ブレーキは当初9インチのディスクブレーキでしたが、後にフロントを10.5インチに拡大したため、15インチの前輪を必要とすることになりました。この変更はハンドリングに影響を与えたと考えられています。

BT3の設計は、後のタスマンシリーズ仕様のブラバムBT4にも流用されています。BT4には、2.5リッターまたは2.7リッターのクライマックスFPF直列4気筒エンジンを搭載。エンジンベイのわずかな改造のみで対応できる設計の柔軟性も見られました。BT4はオーストラリアとニュージーランドで高い人気を博し、カスタマーマシンとして複数台が販売されました。

1963年シーズン前には、シャシーの引き下げと軽量化、塗装色の変更（ダークグリーンとゴールド）などの改良が行われました。シーズン終了後、BT3はプライベーターであるイアン・レイビーに売却され、BRM V8エンジンを搭載してレースに出場。その後、デヴィッド・ヘップワースに売却され、シボレーV8エンジンを搭載してフォーミュラ・リブレやヒルクライムイベントなどで活躍しました。現在では、オリジナルのF1仕様に復元され、博物館のコレクションとして保存されています。

レース戦績

1962年シーズン、BT3はドイツグランプリでデビュー。しかし、エンジントラブルやスロットル操作のトラブルに見舞われ、思うような結果を残せませんでした。その後、デンマークグランプリではロータス24を使用。オウルトンパーク・インターナショナル・ゴールドカップではBT3で3位表彰台を獲得しました。イタリアグランプリは欠場したものの、アメリカグランプリと南アフリカグランプリで4位入賞を果たし、自身の名を冠したマシンで初めてポイントを獲得しました。メキシコグランプリでは2位に入賞しています。

1963年シーズンは、BT3と新車のBT7を併用。ブラバム自身はベルギーとイタリアでBT7を使用できなかったため、BT3で出場しました。BT3を用いたノンタイトル戦では、ソリチュードグランプリとオーストリアグランプリで優勝を果たしました。ソリチュードでの勝利は、自身の名を冠したマシンでの初優勝となりました。

イアン・レイビーの手による1964年と1965年のレース出場ではポイントを獲得することはありませんでしたが、BT3は長きに渡り、F1の歴史にその名を刻む一台となりました。その堅牢な設計と信頼性は、ブラバムチームの成功の礎を築いたと言えるでしょう。

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