アジ科

アジ科（Carangidae）とは

アジ科は、スズキ目 Periformes に属する魚類の分類群の一つで、約30属150種が知られています。アジ、ブリ、コバンアジ、イケカツオなど、食用としてなじみ深い魚を多く含みます。全てが海生で、遊泳能力に優れた肉食魚です。

形態

アジ科の魚は、種類によって全長が数十cmから1mを超えるものまで様々です。他のスズキ亜目魚類との識別点として、肛門と臀鰭の間に2本の遊離棘を持つことが挙げられます。

体型は、広葉樹の葉のように平たいもの（側扁型）と、紡錘形に近いもの（紡錘型）の2つのタイプに分けられます。側扁型の種は沿岸域に生息するものが多く、紡錘型の種は回遊性のものが多く見られます。マアジのように、同じ種の中でも両方の体型が見られる場合もあります。

鰭は比較的小さいものの、尾鰭は大きくV字形に二叉しています。ただし、イトヒキアジ属のように、背鰭と臀鰭の前部が糸状に長く伸びる種もいます。また、ムロアジ属、オニアジ、ツムブリなどは、第二背鰭から尾鰭、臀鰭にかけて小さな離鰭を持つのが特徴です。

アジ科の魚は一般に遊泳力が非常に高く、回遊性のブリは1日に90kmも泳ぎ続けることができます。

生態

アジ科の魚は、熱帯から温帯の海に広く分布しており、特に南の海域ほど種類が多く見られます。サンゴ礁周辺などの沿岸浅海に生息する種が多い一方で、マアジやブリのように沖合を回遊する種もいます。成魚は全て海水で生活しますが、ギンガメアジ属やイケカツオ属の幼魚は、河口などの汽水域に入ることがあります。ギンガメアジの中には、淡水域まで侵入し、小型の淡水魚を捕食する個体も確認されています。

食性は肉食性で、小魚、甲殻類、貝類、頭足類、多毛類などの小動物を捕食します。マアジなどは、発達した鰓耙でプランクトンを濾過して食べることもできます。また、カイワリやシマアジなどは、遊泳するネクトンを追って捕食するほか、海底の砂泥を掘ってベントスも捕食します。

繁殖期は種類や地域によって異なります。卵は分離浮遊卵で、親の保護を受けずにプランクトンとして海中を漂いながら発生します。幼魚は、汽水域や淡水域に侵入したり、クラゲや他の魚に寄り添って泳いだりするなどの行動が見られます。

人間との関わり

アジ科の魚は、ほぼ全ての種が食用として利用され、沿岸各地で漁獲されています。マアジやブリのように、地域で広く消費される大衆魚もいれば、シマアジやヒラマサのように高級食材として扱われるものもいます。ただし、ヒラマサやギンガメアジ属などでは、シガテラ中毒の報告があるため、サンゴ礁域の大型個体を食べる際には注意が必要です。

食用以外では、イトヒキアジの幼魚が観賞魚として飼育されることがあります。また、ロウニンアジなどの大型種は、ゲームフィッシュとして人気があります。

分類

アジ科は、以下の4つの亜科に分類されます。

コバンアジ亜科 Trachinotinae: コバンアジ、マルコバンなど
イケカツオ亜科 Scomberoidinae: イケカツオ、オオクチアジなど
ブリモドキ亜科 Naucratinae: ブリ、ヒラマサ、カンパチ、ツムブリなど
アジ亜科 Caranginae: マアジ、シマアジ、ムロアジ、ロウニンアジなど

アジ亜科は、体の後半部に稜鱗（ぜいご）という硬い鱗を持つのが特徴です。他の3亜科は、稜鱗が発達しません。

系統

分子系統解析の結果、アジ亜科、ブリモドキ亜科、イケカツオ亜科が単系統群を形成することが示唆されています。アジ科全体としては側系統群となり、コバンザメ科、シイラ科、スギを内部に含むという結果が得られています。Campogramma glaycos は解析に含まれていませんが、形態学的特徴からブリ属に近縁だと考えられています。

主な参考文献

（参考文献リストは省略）

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