ブリストル・モーター・スピードウェイ

ブリストル・モーター・スピードウェイは、アメリカ合衆国テネシー州ブリストルに位置する、1周0.533マイル（約858メートル）のオーバルトラックです。通称「サンダーバレー」とも呼ばれ、その名の通り、雷鳴のような轟音と熱狂に包まれる場所です。1960年に開設され、翌年からNASCARのレースが開催されるようになり、現在では年間を通じて多くのレースファンが訪れます。

トラックの特徴

ブリストルは、NASCARの主要3シリーズが開催されるトラックの中で最も短いコースの一つです。かつては非常に高いバンク角（最大36度）を持つことで知られていましたが、コース改修を経て、現在は24〜30度のプログレッシブバンクとなっています。それでも、他のトラックと比較して傾斜が大きく、ハイスピードなレースが展開されるのが特徴です。コーナーの傾斜が大きいため、コース全長は短いながらも、予選では平均125mph、最高速度は140mphに達します。そのため、世界最速のハーフマイルトラックとも呼ばれています。

しかし、ストレートが短く、コース全体も短いため、レース中は常に前車との間隔が詰まっている状況が続きます。ドライバーは、前車を縫うように走り、的確なブレーキングと繊細なアクセルワークを駆使して、スピンしないようにコントロールしなければなりません。路面は滑りやすいコンクリートであり、高い集中力と体力が必要です。ドライバーによっては、ハンドルの持ち方を変えたり、肘をハンドルに押し当ててコントロールするなど、独自の対策を講じています。

ブリストルは、セッティング能力とドライビング能力の両方が求められるトラックです。少しでもリズムが狂うと大きく遅れてしまうため、ドライバーは常に全神経を集中させてレースに臨みます。また、コーション（レース中断）が頻繁に発生するため、スタートのやり直しや、瞬時の判断力も要求されます。これらの要因が重なり、得意なドライバーがレースをコントロールする展開になることが多い一方で、完走できるドライバーは限られます。完走できるのが43台中15人程度というレースも珍しくありません。

ピットレーンも独特で、コースの短さからフロントストレッチとバックストレッチの両方にピットボックスが設置されています。ピット入り口は2つあり、アンダーグリーン時はターン2側とターン4側の両方が、コーション時はターン2側のみが使用されます。ピットレーンの制限速度が30mphと低いため、スピード違反によるペナルティは大きなタイムロスに繋がります。

過去には、2ターン出口のガードレール部分にマシンが激突し、ほぼ真っ二つになるという事故も発生しましたが、幸いドライバーは軽傷で済みました。現在ではセーフティウォールで保護されていますが、コースの一部には外部との通路としてガードレールで塞がれている箇所も存在します。

主なレース

ブリストル・モーター・スピードウェイでは、以下のNASCARシリーズのレースが開催されています。

モンスターエナジー・NASCARカップ・シリーズ
フードシティ500
バスプロショップ・NRA・ナイトレース
エクスフィニティ・シリーズ
スコッツターフビルダー300
フードシティ250
ガンダー・アウトドアーズ・トラック・シリーズ
オーレリー200

これらのレースは、通常、数字が規定周回数を表しています。

各種レコード

ブリストルでは数々の記録が生まれています。

最多勝: ダレル・ウォルトリップ（12勝）
最多ポール: マーク・マーティン、ケール・ヤーブロー（9回）
スプリントカップ予選レコード: カイル・ブッシュ（129.535mph/14.813秒、2013年）
ネーションワイドシリーズ予選レコード: グレッグ・ビッフル（127.132mph/15.093秒、2004年）
* キャンピングワールドトラックシリーズ予選レコード: ケン・シュレーダー（126.922mph/15.118秒、2004年）

スプリントカップシリーズの予選レコードである14.813秒は、世界中のサーキットの中で最短時間であり、「The Fastest Short Track（最速のショートトラック）」という愛称も持っています。

ブリストル・モーター・スピードウェイは、その短いコースと高いバンク角、そして激しいレース展開により、NASCARファンにとって特別な存在です。2025年にはメジャーリーグベースボールの公式戦も開催予定で、モータースポーツ以外のイベントでも注目を集めています。

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