ブリンクマン数

ブリンクマン数：粘性流体における熱伝達と温度制御

ブリンクマン数(Br)は、粘性流体における壁面からの熱伝達を特徴づける無次元数です。主に高分子材料の加工プロセスにおいて、その重要性が高く、粘性散逸による発熱と熱伝導のバランスを定量的に示す指標として用いられます。

ブリンクマン数の定義と計算式

ブリンクマン数は、以下の式で定義されます。

Br = μu² / κ(Tw - T0) = Pr Ec

ここで、

μ：絶対粘度
u：流速
κ：熱伝導率
Tw：壁温
T0：粘性流体温度
Pr：プラントル数
Ec：エッカート数

この式は、粘性散逸によって発生する熱エネルギーと、分子間熱伝導によって輸送される熱エネルギーの比を表しています。言い換えれば、粘性発熱と外部からの熱供給の比率を示す指標です。

ブリンクマン数の物理的意味

ブリンクマン数の値が大きいほど、粘性散逸による発熱が熱伝導による熱輸送を上回り、温度上昇が大きくなることを意味します。逆に、値が小さい場合は、熱伝導が効率的に熱を輸送し、温度上昇が抑制されます。

高分子加工プロセスにおけるブリンクマン数

高分子材料の押出成形や射出成形などのプロセスでは、ポリマー溶融のためのエネルギー供給源として、以下の2つが挙げられます。

1. 粘性発熱: 異なる速度で流れるポリマー溶融体間のせん断によって発生する熱。スクリュー押出機では、スクリューの回転によって発生します。
2. 壁面からの熱伝導: 押出機などの壁面からポリマー溶融体への直接的な熱伝達。ヒーターによって供給されます。

ブリンクマン数は、まさにこの2種類の熱供給源の比率を表しており、プロセスにおける温度制御に重要な役割を果たします。ブリンクマン数を適切に制御することで、ポリマーの溶融状態や成形品の品質を最適化できます。

ブリンクマン数の応用例

ブリンクマン数は、高分子加工プロセスだけでなく、他の粘性流体の熱伝達現象の解析にも利用されます。例えば、潤滑油の温度上昇の予測や、マイクロチャネル内の流体挙動の解析など、幅広い分野で応用されています。

まとめ

ブリンクマン数は、粘性流体における熱伝達現象を理解する上で重要な無次元数です。特に高分子加工プロセスにおいては、プロセス制御や品質管理に不可欠な指標であり、その値を適切に制御することで、効率的で高品質な製品製造が可能となります。 今後の研究においては、より複雑な流れ場や材料特性を考慮したブリンクマン数の拡張や、数値シミュレーション技術との連携による更なる活用が期待されます。

参考文献

J. D. Huba. NRL Plasma Formulary. Naval Research Laboratory, 1994.
Carl W. Hall. Laws and Models: Science, Engineering and Technology. — CRC Press, Boca Raton, 2000. ISBN 978-0-8493-2018-7.
Stephen M. Richardson. Fluid mechanics.
* L. P. Yarin, A. Mosyak, Gad Hetsroni. Fluid flow, heat transfer and boiling in micro-channels.

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