ブルークリスマス

『ブルークリスマス』：特撮なきSF政治ドラマ

1978年、東宝が放った異色作『ブルークリスマス』。岡本喜八監督、倉本聰脚本という豪華スタッフ陣が贈る本作は、当時流行していたSFX映画とは一線を画す、特撮を一切使用しないSF政治ドラマです。英語副題には「BLOOD TYPE：BLUE」が添えられ、そのタイトルが示す通り、物語の中心には青い血液を持つ人々がいます。

不可解な現象と政府の隠蔽

物語は、国際科学者会議でUFOの存在を訴えた兵藤博士の失踪から始まります。国営放送の報道部員である南一矢は、博士の行方を追う中で、世界中で青い血を持つ人間が増加しているという驚くべき事実を突き止めます。彼らは生まれつき青い血を持っているのではなく、UFOとの遭遇によって血液が変色したのです。

一方、国防庁特殊部隊員の沖退介は、東京で理髪店の女性店員である西田冴子に惹かれますが、直後に北海道でのUFO目撃情報を受け、任務に就きます。政府はUFOの存在を隠蔽しており、世界各国で同様の対応がとられていました。UFOは出現しては消えるだけで、青い血の人々は性格が穏やかになるなど、好影響を受けているように見えます。

南は、兵藤博士がアメリカ大統領直属の極秘UFO調査機関「ブルーノート」にいるという情報を得てアメリカへ飛びます。そこで博士と接触した南は、青い血の危険性はないと告げられますが、直後に博士は何者かに拉致されます。帰国した南も政府の圧力によって報道を妨害され、パリ支局へ異動させられます。

国家による弾圧と陰謀

日本政府は青い血の国民を患者として隔離する血液検査制度を強引に立法化します。しかし、その裏では強制収容所への収監、残酷な生体解剖やロボトミー手術が行われていました。

クリスマスイブに何かが起こると予言していた人気ロックバンド「ヒューマノイド」は、飛行機事故で全滅します。彼らの予言は、宇宙人の仕業ではなく、ナチズム復活を企む者たちの陰謀であったことが明らかになります。青い血への恐怖は、民衆を支配するための策略だったのです。パリで南と再会した兵藤博士も、ロボトミー手術を受け廃人のようになっていました。

運命のクリスマスイブ

沖は冴子と恋に落ちますが、冴子は青い血の持ち主でした。クリスマスイブ、沖は青い血の人々を一掃する作戦への出動命令を受けます。作戦中、沖は愛する冴子を射殺し、特殊部隊に銃口を向け、最後は銃撃されて命を落とします。

映画としての側面

『ブルークリスマス』は、政治的なプロパガンダ、国家による弾圧、そして個人の葛藤をスリリングに描いた作品です。興行的には成功しませんでしたが、独特の世界観とメッセージ性の高さから、近年再評価されています。佐藤勝が手掛けた音楽、特にCharが歌う主題歌「ブルークリスマス」も高く評価されています。また、『新世紀エヴァンゲリオン』への影響も指摘されており、日本のSF映画史における重要な作品の一つと言えるでしょう。

キャスト、スタッフ

本作には、仲代達矢、勝野洋、竹下景子、田中邦衛など、錚々たる俳優陣が出演しています。音楽は佐藤勝、撮影は木村大作など、スタッフも豪華な顔ぶれです。

まとめ

『ブルークリスマス』は、特撮に頼らない映像表現、緊迫感あふれる展開、そして深いテーマ性が魅力の、再評価すべき傑作です。UFOや青い血というSF的な要素を背景に、人間の弱さと強さ、国家の闇、そして愛を描いたこの作品は、現代社会にも通じる普遍的なテーマを投げかけています。

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