ブルース・アンド・ジャズ

ブルース・アンド・ジャズ（Blues 'N' Jazz）

『ブルース・アンド・ジャズ』（原題：Blues 'N' Jazz）は、アメリカが誇るブルース・ミュージシャン、B.B.キングによって1983年に世に送り出されたスタジオ録音アルバムです。

制作背景

本作の特筆すべき点の一つは、ジャズ界から迎えられた多彩なゲストミュージシャンたちの参加です。サックス奏者のアーネット・コブ、ヴィブラフォン奏者のウォーレン・チアソン、そしてトランペット奏者のウディ・ショウといった著名なジャズアーティストたちが、B.B.キングのブルースサウンドに新たな色彩を加えています。中でもウォーレン・チアソンは、ジョージ・シアリングやチェット・ベイカーといった名だたるジャズメンとの共演で知られる人物です。チアソンが明かしたエピソードとして、アルバムジャケットに使用されている写真は、レコーディング作業が終了した後に用意されたバースデイケーキを写したものだといいます。

反響と評価

『ブルース・アンド・ジャズ』は、商業的にも一定の成功を収めました。アメリカ国内では、権威ある総合アルバムチャートであるBillboard 200に4週連続でチャートインし、1983年7月23日付のランキングで最高172位を記録しました。また、『ビルボード』誌のR&Bアルバムチャートにおいては、より上位の38位にランクインしています。

批評家からの評価も概ね良好でした。音楽評論家のユージン・チャドボーンは、大手音楽データベースサイトであるオールミュージックにて、本作に5点満点中3点を与えています。彼はこのアルバムを「ゲスト・スターの人選が功を奏し完璧なまでに魅力を増した、1980年代におけるキングのビッグ・バンドの、素晴らしいドキュメント」と称賛しました。これは、ブルースにジャズの要素を取り入れた本作の音楽性を高く評価するものです。

さらに、『ブルース・アンド・ジャズ』は、その音楽的な質の高さが公式にも認められました。第26回グラミー賞において、最優秀トラディショナル・ブルース・レコーディング賞を受賞したのです。これはB.B.キングにとってキャリア3度目となるグラミー受賞であり、彼の円熟期における重要な功績の一つと言えるでしょう。

収録曲

本作には、バラエティ豊かな楽曲が9曲収録されています。そのうち1曲はインストゥルメンタル曲です。

1. インフレーション・ブルース - "Inflation Blues" (Louis Jordan, Allegretto Alexander, Tommy Southern) – 4:15
2. ブロークン・ハート - "Broken Heart" (B.B. King) – 2:45
3. セル・マイ・モンキー - "Sell My Monkey" (B.B. King) – 3:06
4. ヒード・マイ・ウォーニング - "Heed My Warning" (L. Jordan, Howard Bowman) – 5:08
5. ティアドロップス・フロム・マイ・アイズ - "Teardrops from My Eyes" (Rudolph Toombs) – 5:06
6. レインボー・ライオット - "Rainbow Riot" (Andy Gibson, Angelyn Carlington) – 3:39 （インストゥルメンタル）
7. ダーリン・ユー・ノウ・アイ・ラヴ・ユー - "Darlin' You Know I Love You" (Jules Bihari, B.B. King) – 4:48
8. メイク・ラヴ・トゥ・ミー - "Make Love to Me" (Bill Norvas, Alan Copeland, Paul Mares, Ben Pollack, Mel Stitzel, Walter Melrose) – 4:17
9. アイ・キャント・レット・ユー・ゴー - "I Can't Let You Go" (B.B. King) – 3:51

参加ミュージシャン

本作の録音には、B.B.キング自身に加え、以下のミュージシャンたちが参加しています。

B.B.キング - ボーカル、ギター
ビリー・バトラー - ギター
ロイド・グレン - ピアノ
メイジャー・ホリー - エレクトリックベース
オリヴァー・ジャクソン - ドラムス
ウォーレン・チアソン - ヴィブラフォン
アーネット・コブ - リード・テナー・サクソフォーン
フレッド・フォード - テナー・サクソフォーン
エドガー・シニガル - バリトン・サクソフォーン
ハロルド・オースティン - サクソフォーン
ドナルド・A・ウィルカーソン - サクソフォーン
カルヴィン・オーウェンス - トランペット、アレンジ
ジェイムズ・ボールデン - トランペット
ジョン・ロンゴ - トランペット
* ウディ・ショウ - トランペット

ジャズとブルースがクロスオーバーした本作は、B.B.キングの多様な音楽性を象徴する一枚であり、彼のキャリアにおいても重要な位置を占める作品と言えるでしょう。

もう一度検索