500メートル球面電波望遠鏡(FAST)
500メートル球面
電波望遠鏡(Five-hundred-meter Aperture Spherical radio Telescope、通称: 天眼)は、
中国南西部の
貴州省黔南プイ族ミャオ族自治州平塘県に位置する、世界最大の
電波望遠鏡です。
中国科学院国家天文台によって建設され、その建設費は約12億元とされています。このプロジェクトは、「天眼の父」と呼ばれる高名な科学者、南仁東氏が責任者を務めました。
概要
FASTは、4,450枚(または4,600枚とも)の三角形の反射パネルを組み合わせて固定された
球面鏡を形成しています。その直径は500メートルに達し、かつて世界最大だった
アレシボ天文台の305メートルを大幅に上回ります。この巨大な望遠鏡は、自然の窪地である大窩凼窪地を利用して建設されました。
しかし、FASTの
球面鏡は、500メートル全体を有効な受信面として利用できるわけではありません。実際に有効なのは、そのうちの直径300メートル相当の部分です。また、地面に固定されているため、観測可能な範囲は
天頂から40度の範囲に限られます。観測周波数は0.3GHzから5.1GHzで、指向精度は4秒角とされています。
FASTの建設に際しては、周囲の電波や光による干渉を防ぐため、半径5kmの「緩衝圏」が設定されました。この緩衝圏の周辺には、観光客向けの博物館や宇宙をテーマにしたホテル、レセプション施設を含む公園が建設され、その総工費は15億元と、望遠鏡施設自体よりも高額になっています。
また、
中国科学院の院長が、この巨大な
電波望遠鏡を「鍋」に見立てて、
チャーハンを作った場合に全世界の人々に4杯ずつ行き渡るとのスピーチを行いました。この発言は、世界人口を75億人、1杯あたりの米の量を1合とすると、使用する米の量は450万トン、必要な水の量は600万立方メートルになるという計算に基づいています。
計画から完成まで
FASTの計画は
1994年に提案され、
2008年10月に
中国国家発展改革委員会によって承認されました。同年
12月26日に定礎式が行われ、2011年3月に建設が開始されました。
2016年7月3日には最後の反射パネルが設置され工事が完了、同年
9月25日に稼働を開始しました。翌日には、
習近平国家主席から運用開始を祝う書簡が送られました。2020年1月11日に調整を終え、正式に稼働を開始しており、国内外の研究者への開放と共用も検討されています。
500メートル球面電波望遠鏡による発見
FASTは稼働以来、数々の重要な発見をしています。
2016年9月には、試験観測で1350光年先の
パルサーを発見しました。
2017年10月には、さらに6個の
パルサーを発見しました。
2021年5月には、201個もの
パルサーを発見するという大きな成果を挙げました。
2022年6月には、初の持続的で活発的な
高速電波バースト(FRB)の発見にも成功しました。
これらの発見は、宇宙の研究において重要な進歩をもたらしています。
問題点
FASTの建設と、周辺の緩衝圏の設置に伴い、約1万人(報道によっては約9,000人)の住民が強制的に移住させられました。国営メディアは「移転後の生活水準は向上する」と報じましたが、実際には地元住民による訴訟も発生しており、建設に伴う負の側面も存在します。
参考文献
Nan, R.; et al. (2002-06-16) (PDF). Kilometer-square Area Radio Synthesis Telescope - KARST.
Nan, Rendong et al. (2011). “The Five-Hundred-
Meter Aperture Spherical Radio Telescope (FAST) Project”. International Journal of
Modern Physics D 20 (06): 989-1024.
関連項目
バトルフィールド4 - マルチプレイのマップとして収録。
ウィキメディア・コモンズには、500メートル球面
電波望遠鏡に関するカテゴリがあります。
FASTは、その圧倒的な規模と性能で、宇宙の謎の解明に貢献していますが、建設の過程における問題点も抱えています。今後、この望遠鏡がもたらす更なる発見が期待されています。