ブレスレス (1983年の映画)

ブレスレス（1983年の映画）

映画『ブレスレス』（Breathless）は、1983年にアメリカ合衆国で製作・公開された作品です。ヌーヴェルヴァーグを代表するフランスの巨匠、ジャン＝リュック・ゴダール監督が手がけた1960年の名作『勝手にしやがれ』を、舞台を現代のアメリカに移して大胆にリメイクしています。監督を務めたのはジム・マクブライド。主演は、当時のハリウッドを代表する二枚目俳優リチャード・ギアと、若手女優ヴァレリー・カプリスキーが務めました。

物語のあらすじ

物語は、さすらいの青年ジェス（リチャード・ギア）がラスベガスで自動車泥棒を働く場面から始まります。彼は盗んだポルシェを駆り、かつて一夜限りの関係を持ったフランスからの留学生モニカ（ヴァレリー・カプリスキー）が滞在するロサンゼルスを目指します。しかし、逃走の途中でスピード違反を咎めようとした警察官を、偶発的な出来事から射殺してしまいます。これにより、ジェスは全米に指名手配される逃亡犯となります。

ロサンゼルスに到着したジェスは、モニカを探し出そうと試みます。当初は彼女と共にメキシコへ逃れる計画を立てますが、モニカと連絡が取れないまま計画は頓挫。彼は再び別の車を盗み、モニカが在学しているカリフォルニア大学ロサンゼルス校（UCLA）へ乗り込み、ようやく本人と再会を果たします。

しかし、モニカは突然現れた指名手配犯であるジェスに戸惑いを隠せず、彼の破滅的な生き方についていけません。ジェスは逃亡資金を得るため、UCLAへ来るために使った盗難車を中古車販売店に売却しようとしますが、店の主人に正体を見破られてしまいます。彼は強引に現金を奪い取り、さらなる逃走を続けます。

追いつめられたジェスは、再びモニカのもとへ身を寄せます。二人は束の間の時間を共に過ごしますが、その中でモニカはジェスに、自身が妊娠していることを告白します。彼女は、ジェスへの抑えきれない愛情と、これから生まれてくる子供との安定した生活への切望との間で激しく思い悩みます。苦悩の末、モニカはすでに警察にジェスの居場所を伝えたことを明かし、彼に一刻も早く逃げるよう涙ながらに説得します。

ジェスは、モニカに「俺を愛していると言えば、俺はここから消える」と最後の言葉を投げかけますが、モニカはその問いに答えることができません。愛する女性からの反応にショックを受けたジェスは、自らが愛するロックンロール歌手、ジェリー・リー・ルイスのヒット曲「ブレスレス」を口ずさみながら、待ち構える警官隊の前に姿を現します。そして、まさにその瞬間、モニカはジェスに向かって心からの「愛している」と叫びますが、物語は哀しくも破滅的な結末を迎えるのです。

キャスト

主要な出演者は以下の通りです。

ジェス：リチャード・ギア
モニカ：ヴァレリー・カプリスキー
バーンバウム：アート・メトロノ
パーメンテル：ジョン・P・ライアン
ポール：ウィリアム・テッパー
エンライト軍曹：ロバート・ダン
ベルティ：ギャリー・グッドロウ
食料品店の男：ジェームズ・ホン
トルマチョフ：ワルデマール・カリノフスキ
カルリート：ミゲル・ピネロ

日本でテレビ放送された際には、以下の声優陣による日本語吹替版が制作されました（初回放送：1989年7月8日 テレビ朝日『ウィークエンドシアター』）。

ジェス：鈴置洋孝
モニカ：岡本麻弥
パーメンテル：筈見純
ポール：納谷六朗
ベルティ：千田光男
トルマチョフ：小室正幸
カルリート：キートン山田
その他吹替：一城みゆ希、火野カチ子、塚田正昭、岸野一彦

スタッフ

監督：ジム・マクブライド
製作：マーティン・アーリックマン
製作総指揮：キース・アディス
原作：ジャン＝リュック・ゴダール（『勝手にしやがれ』）
脚本：L・M・キット・カーソン、ジム・マクブライド
撮影：リチャード・H・クライン
音楽：ジャック・ニッチェ

日本語版の制作スタッフは以下の通りです。

演出：河村常平
翻訳：岩佐幸子
効果：リレーション
スタジオ：TFCスタジオ
担当：熊沢博之
* プロデューサー：猪谷敬二（テレビ朝日）、東北新社

本作は、ゴダール版が持つ破格のスタイルや衝動を継承しつつ、1980年代のアメリカの風景の中に、アウトローとして生きる主人公と彼に翻弄されるヒロインの、刹那的で切ない愛の物語を描き出した青春ノワールとして評価されています。

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