ブロックとエイトリ

ブロック（Brokkr）とエイトリ（Eitri）は、北欧神話に登場する熟練したドヴェルグ（ドワーフ）の兄弟であり、彼らの鍛冶技術は神々の世界においても比類なきものでした。別名ブロックル、シンドリとも呼ばれています。

物語は、『スノッリ・エッダ』の『詩語法』に記されています。ロキが、イーヴァルディの息子たちにシヴの髪、スキーズブラズニル、グングニルという素晴らしい宝物を作らせた後、彼は更なる高みを目指し、ブロックとエイトリ兄弟に挑戦を挑みました。ロキは兄弟に対し、「自分たちが作った宝よりも優れたものを創造できるか」という賭けを提案し、もしそれが可能ならば、自分の頭を報酬として差し出すと約束しました。

兄弟は直ちに鍛冶に取り掛かりました。エイトリはブロックに、鍛冶の工程で最も重要なふいごの操作を任せ、何があっても手を止めてはならないと厳命しました。しかし、その作業中に一匹のハエ（ロキが姿を変えたものだと伝えられています）が現れ、ブロックの作業を妨害しようとしました。ハエはブロックの顔や手を執拗に攻撃し、集中力を削ごうとしました。しかし、ブロックはエイトリの言葉を守り、どんな困難にも屈せず、ふいごを動かし続けました。

そうして、まずグリンブルスティが完成しました。次に、9夜ごとに同じ重さの腕輪を増やす魔法の腕輪、ドラウプニルが誕生しました。しかし、最後にミョルニルを創造する段階で、ブロックはついにハエの攻撃に耐えきれず、ほんの一瞬だけ手を止めてしまいました。その結果、ミョルニルの柄は、本来あるべき長さよりも短くなってしまったのです。

ブロックはロキと共に、完成した宝物を神々の前に運び、どちらの作品がより優れているかの審判を仰ぎました。神々は、ミョルニルがもたらす恩恵、特にその絶大な破壊力と、アースガルズの守護における重要性を高く評価し、ブロックとエイトリ兄弟の勝利を宣言しました。

ブロックはロキに賭けの報酬である頭を要求しましたが、ロキは狡猾にも「頭を差し出すとは言ったが、首を切るとは言っていない」と言い逃れようとしました。この状況に対し、ブロックは怒りを露わにし、兄弟はロキの口を錐で突き刺し、糸で縫い合わせるという制裁を下しました。この行為は、ロキの欺瞞に対する正当な報いとして、神々の間で受け入れられました。

この物語は、ドヴェルグの卓越した技術力、ロキの狡猾さ、そして神々の世界の複雑な力関係を象徴的に描いています。ブロックとエイトリの物語は、創造性と忍耐の重要性を示すとともに、約束を守ることの重要性を教えてくれます。

参考文献
* 谷口幸男訳「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」『広島大学文学部紀要』第43巻No.特輯号3、1983年。

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