シヴ

北欧神話における女神シヴ：美しき金髪と神々の物語

シヴは、北欧神話に登場する重要な女神です。アース神族に属し、雷神トールとの結びつきが最もよく知られています。古ノルド語ではSifと表記され、様々な文献でその存在が確認できます。

トールの妻、ウルの母

『古エッダ』や『スノッリのエッダ』といった主要な文献によると、シヴは雷神トールの妻であり、神ウル（Ullr）の母親であるとされています。この記述は、シヴが単なる美貌の女神ではなく、神々の世界における重要な役割を担っていたことを示唆しています。トールとの結婚関係は、北欧神話における主要な神々の系譜を理解する上で重要な要素となっています。

ロキの悪戯と黄金のかつら

シヴは、彼女の美しい金髪で知られていました。しかし、『スノッリのエッダ』によると、悪戯好きで知られる神ロキによって、この美しい金髪は刈り取られてしまいます。この出来事によって、シヴは深い悲しみに暮れることとなりました。

この事態を解決するため、ロキはドヴェルグ族の熟練した職人たちに、シヴのために新しい髪を制作するよう依頼します。こうして作られたのが、本物の髪の毛のように見える黄金のかつらです。このかつらは、シヴの頭にくっつくという魔法の特性を持っていました。この出来事は、北欧神話における神々とドヴェルグ族の関わり、そして魔法の力の存在を示す象徴的なエピソードとなっています。

「シヴの髪」：黄金のケニング

シヴの黄金のかつらは、スカルド詩において「シヴの髪」というケニング（隠喩表現）として用いられるようになりました。このケニングは、黄金そのものを表現するだけでなく、シヴの美しさや神々しさ、そしてロキの悪戯とドヴェルグ族の技を想起させる、多層的な意味合いを持っています。

ヤールンサクサとの関係？

『詩語法』では、シヴを「ヤールンサクサのライバル」というケニングで表現している箇所もあります。ヤールンサクサの正確な意味やシヴとの関係については、文献が少なく解釈が分かれる部分です。今後の研究によって、より明確な理解が得られる可能性があります。

穀物収穫と冬の畑

シヴの金髪が刈り取られるという物語は、穀物が収穫され、冬の到来と共に畑が荒涼とした状態となる情景を象徴的に表現しているという解釈もあります。この説は、北欧の農業社会における自然崇拝と、神話が自然現象とどのように結びついているかを示唆するものです。シヴの物語を通して、北欧の人々の自然観や信仰観を垣間見ることができます。

シヴの謎

文献資料が少ないため、シヴの具体的な役割や性格については未だ不明な点も多く残されています。しかし、トールの妻、ウルの母、そして美しい金髪を持つ女神としての描写を通して、彼女が北欧神話において重要な位置を占めていたことは間違いありません。今後の研究によって、より詳細な情報が明らかになることが期待されます。

参考文献

『古エッダ』
『スノッリのエッダ』（『ギュルヴィたぶらかし』、『詩語法』）
V.G.ネッケル他編『エッダ - 古代北欧歌謡集』（谷口幸男訳）
スノッリ・ストゥルルソン『スノリ『エッダ』「詩語法」訳注』（谷口幸男訳注）
* コットレル, アーサー『ビジュアル版世界の神話百科 - ギリシア・ローマ／ケルト／北欧』（松村一男、蔵持不三也、米原まり子訳）

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