ブロックバスター (映画)

ブロックバスターとは

ブロックバスター（blockbuster）とは、映画業界において、興行的に非常に大きな成功を収めた作品を指す用語です。主に長編映画に対して用いられますが、他のメディア作品でも使用されることがあります。

語源

この用語は、1940年代初頭にアメリカの新聞で、都市の一区画（ブロック）を破壊する威力を持つ爆弾「ブロックバスター爆弾」を指す言葉として登場しました。映画用語として初めて使用されたのは1943年5月で、バラエティ誌とモーション・ピクチャー・ヘラルドが『ボンバー・ライダー/世紀のトップ・ガン』を「全てのアクション・スリラー・サービスショーのブロックバスター！」と宣伝しました。1944年にはドキュメンタリー映画『With the Marines at Tarawa』を「2トン・ブロックバスターのように心を打つ」と宣伝しました。

「ブロックバスター」が映画用語として使われるようになった由来には複数の説があります。一つは、映画スタジオが複数の作品フィルムを劇場に売りつける「ブロック・ブッキング」に由来するという説ですが、ブロック・ブッキングは1948年に非合法化されており、この説は有力ではありません。もう一つは、映画雑誌がヒット作の人気を示すため、街のブロック周辺に並ぶ長蛇の列のイラストを頻繁に掲載していたことに由来するという説ですが、実際にはそのような使われ方はされていません。

有力な説は、ブロックバスター爆弾の威力を引き合いに出した広報担当者が最初に用い、それ以降、映画雑誌が大ヒットの可能性のある作品を「ブロックバスター」と表現するようになったというものです。1943年から1944年にかけて、『Bataan』『淑女と拳骨』『ブラジル』などの映画に対して「ブロックバスター」という言葉が使われました。

第二次世界大戦後、一時的に使用されなくなりましたが、1948年にバラエティ誌が大規模予算映画の特集記事で再び「ブロックバスター」を用いました。1950年代初頭までに、「ブロックバスター」は映画業界と映画雑誌において、大スペクタクル、大スケール、巨額の予算が投じられ、かつ興行的な大ヒットを記録する可能性のある作品を指す言葉として定着しました。1950年12月にはデイリー・ミラーが『サムソンとデリラ』を「興行的なブロックバスター」と評し、1951年11月にはバラエティ誌が『クォ・ヴァディス』を「ブロックバスター…興行成績は『國民の創生』と『風と共に去りぬ』に匹敵し、あらゆる意味でスーパー・スペクタクルである」と批評しました。

ブロックバスター時代

1975年、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』の公開により、「ブロックバスター」という言葉が再び注目を集めました。『ジョーズ』は、テンポの速さ、刺激的な娯楽性、劇場外での関心と口コミによってリピーターを生み出すなど、従来の映画とは異なる新しい文化現象を生み出しました。この作品は「ブロックバスター時代」最初の映画とされ、「ブロックバスター映画」というジャンルを確立させた記念碑的な作品とされています。

1977年には『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望|スター・ウォーズ エピソード4_新たなる希望』が公開され、『ジョーズ』の興行成績を塗り替え、1年以上のロングランを記録しました。この2作品の成功後、ハリウッドのプロデューサーたちは、これらのような商業的な魅力を持つイベント映画の製作を目指し、大手映画会社は大予算映画にゴーサインを出すようになり、劇場公開に向けて大規模な宣伝活動が行われるようになりました。両作品は「サマー・ブロックバスター映画」の原型とされており、大手映画スタジオと配給会社は、大規模公開が行われる7月4日までの間に年間マーケティング戦略を練るようになりました。

その後15年間で、『エイリアン』『エイリアン2』『インディ・ジョーンズ シリーズ|インディ・ジョーンズ_シリーズ』『E.T.』『ゴーストバスターズ』『ビバリーヒルズ・コップ』『バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ』『トップガン』『ダイ・ハード』『バットマン』『バットマン リターンズ』『レッド・オクトーバーを追え!』など、多くの高品質なブロックバスター映画が制作されました。

しかし、映画業界がブロックバスター映画の制作に注力するようになったことに対し、一部の批評家や映画制作者からは、「ブロックバスター・メンタリティー」への批判が起こりました。アメリカン・ニューシネマ時代の作家主導による「より芸術的な」小規模映画の衰退を嘆く声も上がりました。映画史家のピーター・ビスキンドは、全ての映画スタジオが『ジョーズ』のような作品を求めているために製作コストが増大し、リスクを避ける傾向が強まり、結果として消費市場における「最小公分母」に基づくブロックバスター映画が制作されるようになったと指摘しています。また、クリス・アンダーソンは著書『ロングテール』の中で、ヒットが期待される映画だけがもてはやされるような社会は、実際には閉鎖的な世界であると主張しています。

出典

All Time Box Office Domestic Grosses at Box Office Mojo

関連項目

ボックスオフィス・ボム：興行的に大きな失敗を記録した映画を指す用語。
スリーパー・ヒット：初動の興行収入が低いものの、長期間にわたりヒットを記録する映画を指す用語。
四分円映画：映画の観客層（25歳以上、25歳未満の男女）全てを対象とした映画。
オスカー・シーズン：アカデミー賞受賞を目指す映画が相次いで公開される時期。
モックバスター：有名な映画に便乗する形で制作された映画を指す用語。
AAA：コンピュータ業界において「ブロックバスター」と同様の意味を持つ用語。
メガミュージカル：ミュージカル業界において「ブロックバスター」と同様の意味を持つ用語。
世界歴代興行収入上位の映画一覧
古典的ハリウッド映画

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