ブータンの地理

ブータンは、インドと中国に挟まれた内陸国であり、その地理的位置は非常に重要です。国境線はインドと605km、中国（チベット）とは470kmに及びますが、特に中国との国境はヒマラヤ山脈に沿っているため、未確定部分も多く、現在も交渉が続いています。

ブータンの地形は、ヒマラヤ山脈の南麓に位置しており、標高によって気候が大きく異なります。標高3,000m以上の北部地域は高山・ツンドラ気候であり、1,200mから3,000mの中部地域はモンスーン気候、1,200m未満の南部地域は亜熱帯気候となっています。国土の大部分は3,000m以上の高地と1,200mから3,000mの中高度地域が占めており、低地はわずかです。

南部地域はかつてマラリアが蔓延するジャングルであり、19世紀末にネパール系移民が入植するまではほとんど無人地帯でした。しかし、この地域はイギリスとの間で領土紛争が起こった歴史もあり、無人地帯だったという主張は再考を要します。

中部モンスーン気候地帯は照葉樹林帯に属しており、カシ類などの常緑樹が密生しています。この照葉樹林帯はヒマラヤから中国南西部、そして日本へと続く地域であり、文化や栽培植物において共通性が見られます。ブータンと日本は、この帯の西端と東端に位置し、農耕生活や漆器の使用、赤米の栽培、妻訪い婚など、多くの類似点が確認されています。ブータンでは蕎麦を使った加工品や醸造酒も盛んであり、日本の食文化との類似も指摘されています。しかしながら、ヒマラヤが日本文化の源流であるという説は、理論的には無理があり、むしろ雲南地方に広がっていた文化がヒマラヤと日本に伝播したと考えるのが自然です。

ブータンの国土は標高差が大きく、南部100mから北部7,550mに及んでいます。気候も多様で、南部は高温多湿、北部は万年雪の高山気候です。谷ごとに気候が変化し、降雨量はレインシャドウ効果によって短距離で大きく変わります。年間の降水量のほとんどは、モンスーン期の6月から9月に集中し、南部国境地帯では年間3,000〜5,000mm、内陸中央峡谷地帯では500〜1,000mmとなっています。

ヒマラヤ山脈に属するブータンには、7,000m級の山々が複数あり、登山家の憧れの的です。しかし、宗教的な理由から、ブータン政府は主要な高山への入山を許可していません。国内最高峰はガンカー・プンスム（7,561m）です。その他、ジョモラリ（7,326m）やジジカンプーカン（7,184m）などの山々があります。

急峻な地形のため、ブータンの河川は急流が多く、水力発電に利用されています。また、氷河湖の決壊による災害も頻繁に発生しています。河川はインドへと流れ込み、最終的にブラマプトラ川に合流します。主な河川には、アモ・チュ、パロ・チュ、ティンプー・チュ、ポ・チュ、モ・チュなどがあります。ゾンカ語では「チュ」が「水、川」を意味します。

峠はブータンの重要な地形であり、特にペレ・ラは東西を分ける重要な境界線とされています。主要都市の間には峠が多く存在し、交通の難所となっています。ドチュ・ラ（標高3,150m）はティンプーとプナカの間、チェレ・ラ（標高3,800m）はパロとハの間、ペレ・ラ（標高3,360m）はワンデュ・ポダンとトンサの間を結んでいます。これらの峠は、ブータンの歴史、文化、そして交通に重要な役割を果たしています。

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