赤米

赤米とは

赤米（あかごめ、あかまい）は、イネの栽培品種のうち、玄米の種皮にタンニン系の赤色素を含むものを指します。野生のイネの多くは赤米であり、古くから栽培されてきました。

赤米の特徴

赤米は、玄米の外層部である種皮に赤色色素が蓄積しています。この色素はタンニン系で、ポリフェノールの一種です。赤米には、以下のような特徴があります。

色: 玄米の種皮が赤色をしています。品種によっては、果皮にも色素を持つものがあり、紫黒米に近い見た目のものもあります。
味: 一般的な白米に比べて、アミロースやタンパク質が多く、粘りが少ないです。また、タンニンによる渋みがあります。
栄養: タンニンなどのポリフェノール類を多く含みます。
栽培: 吸肥力が強く、病害虫や気候の変化に強いです。棚田などの環境不良田でも比較的容易に育成できます。ただし、丈が長く倒れやすい、収量が少ないといった難点もあります。

赤米の種類

赤米には、ジャポニカ型の短粒種とインディカ型の長粒種があります。長粒種は、ベトナムのチャンパから11世紀に中国に伝播したとされています。また、赤米の他にも、アントシアニン系の黒米（紫米、紫黒米）、クロロフィル系の緑米など、さまざまな有色米が存在します。

赤米の歴史

日本には、紀元前に赤米が伝来したと考えられています。飛鳥京跡や藤原京、平城京の遺跡からは、赤米の納品に関する木簡が出土しています。これらの木簡から、赤米が貢物や酒の材料として用いられていたことがわかります。

江戸時代には、赤米は低湿地や高冷地で栽培され、新田開発にも利用されました。しかし、赤米は下等米とみなされ、年貢米としての価値も低く、次第に作付けされなくなりました。

明治以降、赤米は雑草化し、撲滅の対象となりましたが、近年になり、健康志向の高まりや「古代米」ブームにより、再び注目されるようになり、各地で栽培されるようになっています。

日本各地の赤米

日本各地で栽培されている主な赤米の品種を以下に示します。

在来品種
対馬赤米：長崎県対馬市で栽培される神饌米。
総社赤米：岡山県総社市で栽培される神饌米。
種子島赤米：鹿児島県種子島で栽培される神饌米。
武蔵国分寺種赤米：東京都国分寺市で栽培される赤米。
冷水：秋田県で栽培されていた赤米。
赤室・白むろ：青森県で栽培されていた赤米。
トウコン：長野県で繁茂する雑草米。

改良品種
ベニロマン：農研機構が育成した品種。芒が鮮やかな赤褐色または濃紫色で、生け花やドライフラワーにも利用されます。
つくし赤もち：福岡県で育成されたモチ品種。芒が赤褐色または濃紫色です。
紅更紗・紅香：トウコンをベースに改良された品種。
紅衣：赤室をベースに改良された品種。
あかおにもち：岡山県で育成されたモチ品種。

神事における赤米

赤米は、古くから神事にも用いられてきました。長崎県対馬市の多久頭魂神社、岡山県総社市の国司神社、鹿児島県種子島の宝満神社では、現在も神事用の赤米が栽培されています。

東京都国分寺市の恋ヶ窪熊野神社でも、市民活動によって栽培された赤米が神事に用いられています。

赤米の利用

赤米は、雑穀米として白米や他の雑穀と一緒に炊いて食べたり、酒や菓子、麺類などに加工されます。また、赤米の色素を利用した着色酒も製造されています。

赤米の栽培

赤米は、一般的な白米と同じように水田で栽培します。種籾を播いて苗を育て、それを田植えします。収穫時期は、籾が赤く色づいた頃です。

赤米に関する余談

民俗学者の柳田國男は、赤飯の起源は赤米であると主張しています。また、近年では、赤米を「古代米」と称して、古代人が食べていた栄養豊富な米として宣伝されることもあります。

結論

赤米は、古くから日本で栽培されてきた米であり、その独特な色や風味、栄養価から、近年再び注目されています。神事や地域文化との関わりも深く、その歴史や魅力を再発見することで、食文化の多様性を楽しむことができます。

赤米は、その栄養価の高さから、健康志向の高い人々にもおすすめです。ぜひ、赤米を食卓に取り入れてみてください。

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