プジョー・605

プジョー605は、フランスの自動車メーカー、プジョーが1989年から1999年にかけて製造販売した、同社の上級セダンモデルです。

その歴史は、販売不振により1985年に生産終了した前モデル、プジョー604に遡ります。604の後継モデルとなる605は、しばらく空席となっていた600番台モデルとして、1989年フランクフルトモーターショーで発表されました。

プジョーは、それまでの604や505といった大型乗用車において、後輪駆動方式を堅持していましたが、605ではPSAグループ（プジョー・シトロエン・グループ）内の姉妹ブランドであるシトロエンXMをベースに開発されたため、前輪駆動方式へと転換しました。これは、プジョーの大型車において大きな転換点となりました。

605のデザインは、名門デザイン会社ピニンファリーナとの共同開発によるものです。シャープで洗練されたそのスタイリングは、一回り小型のプジョー405にも似た印象を与え、同時期にピニンファリーナがデザインを手掛けたアルファロメオ164とも共通性が見られると評されています。

室内空間は、このクラスにふさわしい豪華な内装が施され、快適な乗り心地と充実した装備が提供されました。ハンドリング性能も高く評価されましたが、販売面では苦戦を強いられました。フランス国内市場以外での販売は伸び悩み、過去のプジョーの大型車同様、市場での成功には至りませんでした。

605は、プジョーの技術力やデザイン性を示すモデルとして注目を集めましたが、市場環境や販売戦略などの要因が重なり、商業的な成功には結びつかなかったと言えるでしょう。それでも、その存在はプジョーの歴史において重要な位置を占めており、後継モデルへの技術的、デザイン的な影響を与えたと考えられます。

プジョー605は、高級セダンとしての高いポテンシャルを持ちながら、販売面での課題を抱えていたモデルとして、自動車史にその名を刻んでいます。そのスタイリング、快適性、そして技術的な革新は、今でも多くの自動車愛好家から高く評価されています。

もう一度検索