プジョー・9X8

プジョー9X8：挑戦と進化を続けるハイパーカー

プジョー9X8は、プジョー・スポールがFIA世界耐久選手権（WEC）参戦のために開発した、ル・マン・ハイパーカー（LMH）規定に準拠したプロトタイプレーシングカーです。2022年のWECにデビューしたこのマシンは、近年のスポーツカーとしては異例とも言えるリアウィングレスのデザインが大きな特徴です。

誕生の背景：伝統と革新の融合

プジョーは、2011年のル・マン24時間レース以来、トップカテゴリーの耐久レースから遠ざかっていましたが、2019年に2022年からのWEC復帰を発表。LMDh規定の発表もあり、参戦方式が注目される中、2020年にハイパーカー開発を正式発表しました。

車名「9X8」には、プジョーのレーシングカーの歴史を継承する「9」、ハイブリッドパワートレインと電動化戦略を表す「X」、そしてプジョーの現行シリーズを示す「8」が込められています。このネーミングは、伝統と革新を融合させたプジョー9X8のコンセプトを象徴していると言えるでしょう。

独自の技術：ハイブリッドシステムと空力設計

プジョー9X8のパワートレインは、2.6L V型6気筒ツインターボエンジンと、前輪駆動用の200kWの電動モーターを組み合わせたハイブリッドシステムです。サフトグループS.A.が開発した900Vバッテリーを採用しており、通常は後輪駆動、モーター駆動時は四輪駆動となるシステムは、プジョー508 PSEと共通の技術思想に基づいています。

目を引くリアウィングレスのデザインは、LMH規定における空力設計の自由度と、ダウンフォースとドラッグのバランスを追求した結果です。規定で調整可能な空力デバイスが1つに制限されているため、リアウィングを廃し、独自の空力特性を追求したデザインとなっています。フロントライトはプジョー市販車同様の3本のラインで構成され、ライオンの爪をイメージしたデザインが特徴的です。

空力パートナーは、当初オレカが予定されていましたが、オレカがLMDhマシンの開発を優先したため、リジェ・オートモーティブがパートナーとして選ばれました。この変更も、プジョー9X8開発における様々な挑戦を物語っています。

進化：2024年仕様

2024年3月、プジョー9X8は大幅な改良を施した2024年仕様を発表。大きな変更点は、リアウィングの追加です。初期型のリアウィングレスデザインから一転し、リアウィングを採用することで、車両重量バランスや空力バランスをリア寄りに変更しました。空力コンセプトの大幅な変更により、マシン表面の90～95％が変更されています。この変更は、さらなるパフォーマンス向上を目指したプジョーの開発姿勢を示しています。

レース活動：挑戦と成長の軌跡

2022年シーズンからWECに参戦したプジョー9X8は、トヨタやグリッケンハウスといった強豪としのぎを削りました。開発の難航により、初期は出遅れましたが、2022年シーズン第4戦モンツァより2台体制で参戦を開始。2023年シーズンには、ル・マン24時間レース100周年を記念した特別カラーリングを纏い、第5戦モンツァ6時間レースでは、念願の初表彰台となる3位を獲得しました。これは、プジョー9X8とチームの成長を象徴する大きな成果と言えるでしょう。

知られざるエピソード：日本のモータースポーツファンを沸かせた出来事

2022年9月、NHKのニュース番組で、WEC富士に参戦したプジョー9X8のドライバーたちが、日本の観光客として寿司握り体験をしている様子が報道されました。特に、日本のレースで活躍していたロイック・デュバルとジェームス・ロシターの存在に気づいたモータースポーツファンたちがSNS上で話題になりました。このエピソードは、プジョー9X8が日本でも注目されていることを示す一例と言えるでしょう。

まとめ：未来へ向かう挑戦

プジョー9X8は、リアウィングレスという大胆なデザイン、革新的なハイブリッドシステム、そして幾多の挑戦と成長の軌跡を刻んできたレーシングカーです。今後の活躍にも目が離せません。

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