プノン・クーレン

プノン・クーレン（Phnom Kulen）は、「ライチの山」を意味するクメール語に由来し、カンボジアのシェムリアップ州に位置する山岳地帯です。小山脈を形成しており、ダンレク山地の南に位置します。最高地点は487メートルで、平均標高は約400メートルと比較的均一な高さですが、南東側に向かってやや高くなっています。地質的には砂岩で構成され、アンコール時代の重要な採石場でした。

地勢と水流
プノン・クーレンは、シェムリアップの北東約40キロメートルに位置し、北西から南東に約30キロメートルにわたって連なっています。山にはチュ・プリア川が渓谷を流れ、二つの滝があります。一つ目の滝は高さ4-5メートル、幅20-25メートル、二つ目の滝は高さ15-20メートル、幅10-15メートルで、乾季と雨季でその規模が変化します。

保護地域
プノン・クーレンは国立公園に指定されており、スヴァイ・レンとヴァ・リンの区域にまたがります。この保護地域は、滝などの自然景観を保全することを目的としています。

歴史と信仰
プノン・クーレンは、カンボジアで最も神聖な山の一つとされ、ヒンドゥー教徒や仏教徒にとって特別な巡礼地です。この山は、802年にジャヤーヴァルマン2世がジャワからの独立を宣言した場所であり、古代クメール王朝の発祥地としてカンボジア人にとって重要な象徴となっています。アンコール時代の碑文では「マヘンドラパルヴァタ」（大インドラの山）として知られています。

山中には、豊穣を象徴する彫刻が数多く見られ、特に川床に刻まれた1000以上の小彫刻群は、水面下わずか5センチメートルの砂岩に彫られています。この川は、ジャヤーヴァルマン2世が沐浴した場所とされ、神聖視されています。彫刻には、ヒンドゥー教の神ヴィシュヌがヘビのアナンタの上に横たわる姿や、ハスの花がブラフマーのへそから伸びる様子などが表現されています。川はやがて滝へと続いています。

近くには16世紀の磨崖仏、プリア・アン・トムを安置する寺院があります。この寺院には、全長8メートルの巨大な涅槃仏が巨岩に彫られており、国内最大級の大きさです。また、サムレ族がかつて砂岩を採掘し、王都に運んでいた場所でもあります。クメール・ルージュ政権時代には、この地が最後の拠点として使用されていました。

世界遺産評価
プノン・クーレンは、1992年にユネスコの世界遺産暫定リストの文化カテゴリーに追加されました。この地域は、その歴史的・文化的価値と、美しい自然景観から、将来的な世界遺産登録が期待されています。

プノン・クーレンは、単なる山岳地帯ではなく、カンボジアの歴史、信仰、文化が深く結びついた場所です。自然の美しさと古代の遺産が融合するこの地は、訪れる人々に深い感銘を与え続けています。

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