プファルツ家

プファルツ家：欧州の歴史を彩った一族

プファルツ家は、ヴィッテルスバッハ家の一 branch で、主にドイツのプファルツ地方を統治した家系です。その歴史は、神聖ローマ帝国の政治、宗教、そして欧州各国の王室に深く関わっています。選帝侯位の獲得からバイエルン王国の成立、そして北欧やギリシャの王室への影響まで、プファルツ家の足跡を辿ります。

ヴィッテルスバッハ家からの分化と台頭

1180年、オットー1世がバイエルン公に封じられ、ヴィッテルスバッハ家がバイエルンを統治。ルートヴィヒ1世がライン宮中伯位を継承し、プファルツ地方がヴィッテルスバッハ家の世襲領土に。オットー2世の時代にバイエルンは二分され、ルートヴィヒ2世が上バイエルンとライン宮中伯領を、ハインリヒ13世が下バイエルンをそれぞれ継承。

ルートヴィヒ2世の死後、ライン宮中伯位はルドルフ1世が継承するも、ルートヴィヒ4世との対立で一時的に剥奪。1329年、ルドルフ1世の一族がライン宮中伯を、ルートヴィヒ4世の一族がバイエルン公を有することで和解。以後、ルドルフ1世の系統がプファルツ家、ルートヴィヒ4世の系統がバイエルン家と区別されるようになりました。

ループレヒト1世は金印勅書により選帝侯位を獲得し、ライン宮中伯はプファルツ選帝侯に昇格。ループレヒト3世はローマ王に選出されるも、世襲化には至りませんでした。

分枝の形成と宗教改革

ループレヒト3世の息子たちの代で、プファルツ家は複数の分枝を形成。プファルツ選帝侯家、プファルツ＝ノイマルクト家、プファルツ＝ジンメルン＝ツヴァイブリュッケン家、プファルツ＝モスバッハ家が誕生。プファルツ選帝侯家が本領を統治し、他の分家が残りの領地を統治する体制となりました。

宗教改革の波はプファルツにも押し寄せ、フリードリヒ2世がルター派を採用。その後、オットー・ハインリヒが再びルター派を採用するも、1559年に男子なく断絶。ジンメルン家のフリードリヒ3世が継承し、カルヴァン派に改宗。プファルツ家はカルヴァン派の保護者となり、ハイデルベルクはカルヴァン派の牙城となりました。

フリードリヒ4世はプロテスタント同盟を結成し、その指導者となるなど、帝国全体のプロテスタントを庇護する立場に。フリードリヒ5世はボヘミア王に推戴されるも、これが三十年戦争の引き金となりました。

三十年戦争とプファルツ継承戦争

狂信的なカトリック教徒であるハプスブルク家の皇帝フェルディナンド2世は、プファルツ家並びにプロテスタントを壊滅させることを決意。バイエルン公マクシミリアン1世と協力し、1620年の白山の戦いでフリードリヒ5世率いるプロテスタント軍を撃破。フリードリヒ5世はプファルツを喪失し亡命。プファルツ選帝侯位はマクシミリアン1世に与えられました。

1648年のヴェストファーレン条約で三十年戦争が終結。フリードリヒ5世の息子カール1世ルートヴィヒに新たに選帝侯位が与えられ、バイエルン家が絶えた際にはプファルツ家がその選帝侯位を継承する取り決めがなされました。

1685年、カール2世が嗣子なく没し、ジンメルン家が断絶。プファルツ＝ノイブルク公フィリップ・ヴィルヘルムが選帝侯位を継承するも、カトリック信仰に戻ったことから、プファルツ継承戦争が勃発しました。

バイエルン選帝侯位の継承とその後

ヨハン・ヴィルヘルム、カール3世フィリップが男子を残さなかったことでノイブルク家は1742年に断絶。プファルツ＝ズルツバッハ公カール4世フィリップ・テオドールが選帝侯位を継承。1777年にバイエルン家が断絶したことを受けて、カール・テオドールがバイエルン選帝侯位も継承し、ヴィッテルスバッハ家は統合されました。

カール・テオドールも男子を残すことなく1799年に死去しズルツバッハ家は断絶。プファルツ＝ツヴァイブリュッケン公マクシミリアン4世ヨーゼフが選帝侯位を継承。フランス革命戦争の影響でプファルツを放棄するものの、1806年に初代バイエルン国王マクシミリアン1世となり、その子孫が1918年までバイエルンを統治しました。

プファルツ家は、その分枝を通じて、スウェーデン王室やギリシャ王室にも影響を与えました。プファルツ＝クレーブルク家出身のカール10世アドルフはスウェーデン王位を継承し、プファルツ＝ビルケンフェルト家出身のオソン1世はギリシャ国王に選出されています。

プファルツ家は、神聖ローマ帝国の政治、宗教、そして欧州各国の王室に深く関わった一族であり、その歴史は欧州の歴史を理解する上で重要な要素となっています。

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