プリンス・ビラ

ピーラポンパーヌデート親王の生涯と業績

ピーラポンパーヌデート・パーヌパン親王（Prince Birabongse Bhanudej Bhanubandh）は、1914年にタイ王国（当時はシャム）で生まれた王子であり、アジア人として初めてフォーミュラ1（F1）に参戦したドライバーでもあります。彼は、王族でありながらモータースポーツに情熱を注ぎ、数々の業績を達成しました。

生い立ちと教育

親王はラーマ4世の孫として、バンコクで生まれました。彼は13歳のときにイギリスに留学し、名門のイートン校を経てケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジで美術史を学びました。留学中、彼はタイの政治的変革を知らず、そのままイギリスに留まることになりました。1932年にタイで発生したクーデターは彼の帰国の機会を奪いましたが、彼はモータースポーツの世界でのキャリアを築き始めます。

モータースポーツの道

親王のレーシングキャリアは、ケンブリッジ大学で友人から贈られた車がきっかけで始まりました。1935年に行われたブルックランズ・サーキットでのレースで、彼は好成績を収め、その後「ホワイトマウス・レーシング」に参戦しました。彼はタイ王国のナショナルカラーをまとったERAR2B「ロムルス」を駆り、数々のレースで優秀な成績を収め、特にドニントンパークでは複数回入賞しました。

親王は、マセラティ8CMなどのトップマシンをドライブし、1939年にはアジア人初のル・マン24時間レースにも出場しました。彼はこの頃、ヨーロッパのモータースポーツ界での有力なドライバーとして知られるようになりました。

第二次世界大戦とF1参戦

第二次世界大戦が勃発すると、親王は帰国を予定していたイベントが中止になりました。その後、彼はイギリスに留まり、イギリス軍の市民兵として訓練を受ける一方で、タイの政府とも連絡を取り続けました。1945年にタイが連合国側に鞍替えした後、彼はモータースポーツ界に復帰し、F1世界選手権にも参戦しました。

1950年には、マセラティのドライバーとしてイギリスGPに出場し、アジア人として初めてのF1ドライバーとなりました。彼は1954年までF1に参加し続け、その間に2勝を挙げました。特に、1950年代初頭の彼の活躍は、多くのファンから支持されました。

引退後の活動と死去

F1を引退した後、親王はフランスに居を構え、その後タイに帰国し自動車関連のビジネスを行いました。また、タイのセーリング代表選手としてオリンピックにも参加し続け、多くの国際的なイベントに出場しました。

1985年、ロンドンで亡くなるまで、親王はアジアで初めてのF1ドライバーとしての名声を保持し続けました。現在、「ビラ・サーキット」は彼の名を冠しており、彼の業績は世界中のモータースポーツ界において輝きを放っています。親王の人生は、王族でありながら自身の情熱を追求した例として、多くの人に影響を与え続けることでしょう。

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