プリークネス

プリークネス：アメリカ競馬史に名を刻んだサラブレッド

1867年、アメリカ合衆国で生まれたサラブレッド、プリークネス。鹿毛の牡馬である彼は、アメリカ競馬、特にプリークネスステークスという名レースにその名を永遠に残す存在となりました。本稿では、競走馬としての活躍から、種牡馬としてのキャリア、そしてその生涯の物語を紐解きます。

華々しい競走馬時代

プリークネスは1870年、ピムリコ競馬場で開催された最初のステークスレース「ディナーパーティーステークス」（現在のディキシーステークス）を制覇し、華々しいデビューを飾りました。この勝利は、後に彼に因んで名付けられる「プリークネスステークス」創設の大きなきっかけとなりました。

その後の活躍も目覚ましく、ウエストチェスターカップやマンハッタンハンデキャップといった重賞レースでも勝利を収めます。特に注目すべきは、8歳時のサラトガカップでの活躍です。3歳下のベルモントステークス優勝馬スプリングボックとの接戦を制し、同着優勝という栄誉に輝きました。この活躍は、彼の類まれな能力と長く続く競走生活の証です。

彼の競走成績は、まさに華麗なるものでした。3歳から8歳まで、数々の重賞レースを制し、上位入賞を繰り返しました。以下に主な競走成績をまとめます。

1870年（3歳）： ディナーパーティーステークス 1着
1871年（4歳）： ウエストチェスターカップ 1着、マチュリティステークス 1着
1872年（5歳）： ロングブランチステークス 2着
1873年（6歳）： マンハッタンハンデキャップ 1着、グランドナショナルハンデキャップ 1着、ロングブランチステークス 1着、ジョッキークラブハンデキャップ 1着
1874年（7歳）： ジョッキークラブハンデキャップ 1着、サラトガカップ 2着
1875年（8歳）： サラトガカップ 1着、ボルチモアカップ 1着、ジョッキークラブハンデキャップ 2着、フォーダムハンデキャップ 3着

「プリークネス」という名の由来

プリークネスという名前は、ニュージャージー州の先住民族の言葉「プラ-クア-レス (Pra-qua-les)」に由来します。「鶉の森」を意味するこの言葉は、彼の馬主であるサンフォード氏が所有していた牧場の名称に由来しています。サンフォード氏は、ケンタッキー州のウッドバーン牧場で行われたセリ市で、名種牡馬レキシントンを父に持つ牡馬を2000ドルという高値で落札し、その馬を「プリークネス」と名付けたのです。

種牡馬としてのキャリアと悲劇的な最期

8歳で競走生活を終えたプリークネスは、イギリスへと渡り、種牡馬として新たなキャリアを歩み始めます。ハミルトン公爵に購入され、多くのサラブレッドを輩出しました。しかし、晩年は気性が荒くなり、扱いにくい馬となったと言われています。そして、ある日、ハミルトン公爵の怒りを買って銃で撃たれ、その生涯を終えました。この事件はイギリスの動物愛護法改正の契機となり、動物虐待に対する意識改革を促すこととなりました。

プリークネスステークスの誕生

プリークネスの活躍と、ディナーパーティーステークスの勝利は、メリーランドジョッキークラブに大きな感銘を与えました。そして、1873年、彼を記念して「プリークネスステークス」が創設されたのです。このレースは、現在もアメリカクラシック三冠競走の第2戦として、競馬ファンの注目を集める重要なレースとなっています。

プリークネスは、輝かしい競走成績を残しただけでなく、その名前に由来する歴史的レースの創設に貢献した、アメリカ競馬史に不可欠な存在と言えるでしょう。彼の生涯は、競走馬としての栄光と、種牡馬としての成功、そして悲劇的な最期という、ドラマチックな物語です。彼の物語は、今もなお語り継がれ、競馬ファンの心を掴んで離しません。

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