アメリカクラシック三冠

アメリカクラシック三冠（Triple Crown of Thoroughbred Racing）は、アメリカ合衆国におけるサラブレッドの平地競馬の中でも特に名誉ある一連の競走を指します。この競走は毎年5月から6月にかけて行われ、対象となる馬はすべて3歳であることが求められます。三冠は以下の3つのレースから成り立っています。

1. ケンタッキーダービー
このレースは、ケンタッキー州ルイビルのチャーチルダウンズ競馬場で行われ、ダートでの1マイル1/4（約2012メートル）の距離です。通常、5月の最初の土曜日に開催されるこのレースは、アメリカ競馬の象徴的なイベントとされています。

2. プリークネスステークス
続いて、2週後に開催されるこのレースは、メリーランド州のピムリコ競馬場で行われます。距離はダート1マイル3/16（約1911メートル）で、通常、ケンタッキーダービーの後に行われるため、二冠を狙う馬にとっての重要なステップとなります。

3. ベルモントステークス
そして3週後には、ニューヨーク州のベルモントパーク競馬場で最終戦が行われます。このレースはダート1マイル1/2（約2414メートル）という長い距離で、三冠を達成するための決定的な舞台となります。

アメリカのクラシック三冠は、イギリスのクラシック三冠と異なり、フランスの競馬スタイルに近い特徴を持ちます。この3レースは比較的短い期間に集中して行われ、牡馬・牝馬・せん馬が出走することが可能ですが、牝馬は別途設けられたケンタッキーオークスやニューヨーク牝馬三冠（トリプルティアラ）に参加することが多く、少数のみが三冠路線へ挑戦します。

歴史

アメリカクラシック三冠を構成する各レースは、以下のように歴史を持っています。

- ベルモントステークス: 1867年に創設され、その後ベルモントパークに移転しました。
- プリークネスステークス: 1873年に設立
- ケンタッキーダービー: 1875年に始まる

しかし、最初から「三冠」という概念があったわけではありません。史上初めてこの3レースをすべて制したサーバートンが登場したのは1919年のことですが、この時は「三冠」とは呼ばれていませんでした。1930年、競馬新聞のコラムニストであるチャールズ・ハットンがギャラントフォックスについての記事で「三冠」という言葉を初めて用いたとされています。

さらに、1985年にはスペンドアバックがケンタッキーダービーを勝利しつつも、続くプリークネスステークスに出走せず、代わりにG3ジャージーダービーに挑戦する事態が発生しました。これは、ジャージーダービーを制した馬に与えられる200万ドルのボーナスが後押ししました。この出来事は、三冠競走の重要性を再認識させるものであり、各競馬場が共同で設立したトリプルクラウンプロダクションが、1986年から三冠馬に対し100万ドルのボーナスを設定しました。

優れた馬が三冠を達成することは名誉とされ、2015年にはアメリカンファラオが37年ぶりにすべてのレースを制覇しました。この結果、三冠を達成した馬の数は歴史上12頭に達します。その後も続くジャスティファイを含め、無敗での三冠達成者も生まれています。

年表

- 1867年: ベルモントステークスが創設
- 1873年: プリークネスステークスが創設
- 1875年: ケンタッキーダービーが設立
- 1930年: ギャラントフォックスが三冠を達成、初めて「三冠」の称号を得る。
- 1973年: セクレタリアトが25年ぶりに三冠を達成。

このように、アメリカクラシック三冠はただのレースの集合でなく、競馬界における名誉とスリルを兼ね備えた、魅力的なイベントなのです。

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