プレトリア・キャッスル (護衛空母)

HMSプレトリア・キャッスル：客船から護衛空母へ、そして歴史的瞬間へ

HMSプレトリア・キャッスル(HMS Pretoria Castle, F61)は、第二次世界大戦で活躍したイギリス海軍の護衛空母です。その生涯は、華麗な客船としての始まりから、戦場での役割、そして歴史的瞬間の舞台へと変化に富んでいます。

客船としての優雅な時代：

1938年、ベルファストのハーランド・アンド・ウルフ社で進水したプレトリア・キャッスルは、ユニオン＝キャッスル・ラインのオーシャン・ライナーとして建造されました。1939年の竣工後、アフリカ一周航路を優雅に航海していました。しかし、第二次世界大戦の勃発によって、その運命は大きく変わることになります。

武装商船として：

1939年10月、イギリス海軍はプレトリア・キャッスルを取得し、武装商船へと改装しました。6インチ砲と3インチ砲を搭載した同艦は、1939年11月28日に就役。フリータウンを拠点に、大西洋上で船団護衛の任務に就きました。この期間、ヴィシーフランスの船舶拿捕や敵船の捕捉など、数々の作戦に参加しています。1941年6月にはヴィシーフランスの船「Desirade」を拿捕し、8月には軽巡洋艦「デスパッチ」と共に「Nordeney」を捕捉、自沈に追い込む活躍も見せています。

護衛空母への転身：

1942年7月16日、イギリス海軍はプレトリア・キャッスルを完全に購入。タインアンドウィアのスワン・ハンター造船所で、本格的な護衛空母への改装工事が開始されました。1943年7月29日に空母として再就役し、8月9日に改装が完了しました。その後、ウェスタンアプローチ管区に配属され、試験空母としての役割を担いつつ、DS46船団の護衛など、実践的な任務にも従事しました。

歴史的瞬間：

1945年、プレトリア・キャッスルは航空史に刻まれる偉業を達成します。エリック「ウィンクル」・ブラウン大尉が操縦するベル エアラコブラMk1（機体番号AH574）が、前輪式降着装置を備えた機体としては初めて空母への着艦に成功したのです。この偉業は、航空機の着艦技術の進歩にとって大きな一歩となりました。

戦後の日々：

戦後、プレトリア・キャッスルはユニオン＝キャッスル・ラインに売却され、客船として第二の人生を歩み始めました。艦名は「ウォリック・キャッスル(Warwick Castle)」と改められ、イギリスと南アフリカ間の航路を運行しました。しかし、1962年にバルセロナで売却され、スクラップとしてその生涯を終えました。

その足跡：

HMSプレトリア・キャッスルは、客船、武装商船、護衛空母と、その生涯を通じて様々な役割を果たしました。そして、前輪式降着装置を備えた航空機の空母着艦という歴史的瞬間の舞台となったことは、その名を永遠に歴史に刻むこととなったのです。その波乱に満ちた生涯は、戦争と平和、そして技術革新の歴史を物語っています。

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