プログレスM-29M

プログレスM-29M

プログレスM-29Mは、ロシア連邦宇宙局（ロスコスモス）によって開発・運用される無人宇宙補給船「プログレス」シリーズの一機です。国際宇宙ステーション（ISS）へ食料、水、燃料、酸素、実験機器などの重要な物資を輸送する任務を担うために設計されました。この特定の機体は、2015年に行われたISSへの補給ミッションに使用されました。なお、アメリカ航空宇宙局（NASA）や日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）など、ISS計画に参加する他の機関では、識別の便宜上、「プログレス61」あるいは「61P」という名称で呼ばれることもあります。

シリーズにおける位置づけ

プログレスM-29Mは、プログレスM型の改良型として製造された一連の機体のうち、最後のミッションを担ったという点で歴史的な意義を持ちます。この機体の打ち上げと運用をもって、ロシアの無人宇宙補給船は、さらに近代化・高性能化された「プログレスMS」型へと世代交代を進めていくことになります。M-29Mの任務は、それまでのプログレスM改良型で培われた技術の集大成であり、次世代機へのスムーズな移行を準備する役割も果たしました。

打ち上げ

プログレスM-29Mは、カザフスタン共和国に位置する、世界有数の規模と歴史を誇る宇宙港、バイコヌール宇宙基地から宇宙へと旅立ちました。打ち上げは、2015年10月1日の協定世界時（UTC）午後4時49分に成功裏に行われました。強力なソユーズロケットによって軌道に乗せられたプログレスM-29Mは、国際宇宙ステーションを目指しました。

国際宇宙ステーションへのドッキング

打ち上げからわずか数時間後、軌道上でISSに到達したプログレスM-29Mは、自動ランデブー・ドッキングシステムを用いて国際宇宙ステーションとの結合作業を開始しました。そして、2015年10月1日、協定世界時午後10時52分に、ISSのロシア区画に属する「ズヴェズダ」サービスモジュールに設けられたドッキングポートに無事接続を完了しました。ズヴェズダは、ISSの初期の核となるモジュールの一つであり、生命維持システムや推進システム、そして複数のドッキングポートを備える重要な区画です。

軌道上での活動期間

プログレスM-29Mは、ISSにドッキングしている間、搭載してきた貨物をISSクルーが取り出すための倉庫としての役割を果たしました。また、ISSから排出される不要品や廃棄物を積み込み、最終的に大気圏突入時に燃え尽きる「宇宙のごみ箱」としても機能します。当初の計画では、プログレスM-29MはISSに約2ヶ月間滞在する予定でした。しかし、その後の運用計画の調整により、滞在期間は延長されることとなりました。2016年2月5日時点の情報では、プログレスM-29MがISSから分離するのは2016年3月29日になる見込みであるとされていました。補給船の滞在期間は、ISS全体のロジスティクスや運用計画に合わせて柔軟に調整されるのが一般的です。

搭載貨物

プログレスM-29MがISSへ届けた貨物の総重量は、2,369キログラムに達しました。これらの物資は、ISSで活動する宇宙飛行士たちの日常生活を支え、科学研究を推進し、ステーション自身の機能を維持するために不可欠なものです。貨物の内訳は以下の通りでした。

食料、交換部品、実験機材など: 1,549キログラム。宇宙での食事、設備のメンテナンスや修理に必要な部品、そして軌道上で行われる様々な科学実験に必要な機器や材料が含まれます。

水: 420キログラム。飲料用や衛生用、実験用など、ISSにおける水の需要を満たすために供給されました。

推進剤: 350キログラム。ISSの軌道を維持するため、あるいは軌道変更や姿勢制御を行うために必要な燃料です。定期的に推進剤を補給しないと、ISSは徐々に軌道高度を下げてしまいます。

酸素/空気: 50キログラム。ISS内部の居住空間における空気を供給し、宇宙飛行士が呼吸するための酸素（または混合気体）です。閉鎖環境である宇宙ステーションでは、新鮮な空気の供給が生命維持に直結します。

これらの物資の輸送は、ISSが長期にわたり、人類の宇宙活動拠点として機能し続ける上で、プログレスのような無人補給船がいかに重要な役割を担っているかを明確に示しています。プログレスM-29Mは、その任務を遂行し、プログレス補給船の歴史に一つの節目を刻んだ機体と言えるでしょう。

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