プログレスM-34

プログレスM-34

プログレスM-34は、1997年にロシア連邦によって宇宙ステーション・ミールへの物資補給のために運用された無人の宇宙船です。ミール計画において、生命維持に必要な物資や実験機器などを輸送する重要な役割を担うプログレス補給船シリーズの一機として開発されました。しかし、この船の運用は予期せぬ重大な事故によって特筆されることになります。

機体の概要と積荷

プログレスM-34は、ミールを訪れた歴代のプログレス補給船64機のうち52機目に相当します。機体はプログレス-M型（形式名11F615A55、製造番号234）として製造されました。この補給船に搭載された貨物には、当時ミールに滞在していたEO-23長期滞在クルーが必要とする多岐にわたる物資が含まれていました。

主な積荷は以下の通りです。

乗員の生存に必要な食料、水、酸素
科学実験用の装置類
宇宙ステーションの軌道を維持・変更するための燃料
予備の宇宙服（2着）
消火器
酸素を生成する固形燃料（酸素キャンドル）
ミールの生命維持システムの修理に用いられる支援工具類

これらの物資は、長期にわたる宇宙滞在を支える上で不可欠なものでした。

打ち上げとドッキング

プログレスM-34は、1997年4月6日協定世界時16時4分5秒に、中央アジアのカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の1/5発射台より、信頼性の高いソユーズ-Uロケットによって宇宙へと打ち上げられました。約2日間の飛行を経て、同年4月8日グリニッジ標準時17時30分1秒、無事にミールのクバント1モジュールの後方ポートへの自動ドッキングを成功させました。最初のドッキング運用は順調に進み、搭載された物資はミールのクルーによって回収・利用されました。

衝突事故とその背景

軌道上で約2ヶ月半を過ごした後、プログレスM-34は同年6月24日にミールからドッキングを解除しました。これは、翌日に行われるある重要なドッキング試験のための準備でした。翌6月25日、この補給船は再びミールへと接近を開始しますが、今回の接近は、通常用いられる自動ドッキングシステムではなく、ミールの宇宙飛行士による手動操作で行われる特別なぜいんでした。

この手動操作によるドッキング試験は、ソビエト連邦崩壊後にウクライナの管理下に置かれた自動ドッキングシステム「クルス」の使用料を削減し、将来のプログレス計画の運用コストを下げることを目的として計画されました。経済的な制約が、このリスクを伴う試験実施の背景にあったとされます。

しかし、この試験中に事態は急変します。同日9時18分、宇宙飛行士ワシリー・ツィブリエフの操作中に、プログレスM-34はミールの「スペクトル」モジュールに激しく衝突してしまったのです。この衝突により、「スペクトル」モジュールの太陽光発電パネルと船体構造の両方に大きな損傷が発生し、ステーションの健全性に深刻な影響を与えました。

事故後の運命

衝突後、損傷を負ったプログレスM-34はミールから緊急離脱するマニューバを実行しました。事故によって当初の任務を継続する能力を失ったこの船は、同年7月2日に軌道から外され、廃棄処分となりました。具体的には、協定世界時5時34分58秒に大気圏再突入が開始され、6時31分50秒には太平洋上空で完全に燃え尽き、その役目を終えました。

プログレスM-34による衝突事故は、ミール計画における最も深刻な事故の一つとして記録されています。この事故は、自動システムに頼らない手動操作の難しさや、宇宙での運用におけるリスク管理の重要性を改めて浮き彫りにしました。ミールはその後も運用が続けられましたが、この事故による損傷は、ステーションの寿命や運用に影響を与える要因の一つとなりました。

関連項目

1997年の宇宙飛行
プログレス補給船の飛行一覧
ミールへの無人宇宙飛行の一覧
* 軌道上での衝突 (Collision in orbit)

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